GMP対応の設計から製造管理・品質管理まで
第1章 注射用水の製法に関する歴史
1.1 日本薬局方における注射用水の製法に関する経緯
1.2 USPにおける注射用水の製法に関する経緯
1.3 EPにおける注射用水の製法に関する経緯
第2章 製薬用水に関する日米欧薬局方の規格試験
2.1 日米欧薬局方における製薬用水各条(モノグラフ)
2.2 理化学試験法(導電率、TOC)
2.3 微生物試験(生菌数試験)
第3章 製薬用水に対するGMP管理基準
3.1 GMP管理基準の比較と解説
第4章 製薬用水システムの構築
4.1 ユーザー要求
4.2 トータルシステムの構築
4.3 要素技術
4.4 クオリフィケーション
4.5 リスクアセスメント
第5章 製薬用水システムの維持管理
5.1 製薬用水システム管理の全体像
5.2 微生物汚染防止
5.3 警報基準値および処置基準値
5.4 水質モニタリング
5.5 プロセス制御と設備機能の維持管理
5.6 製薬用水の製造および品質管理を取り巻く変化と展望
第6章 膜法によるWFI製造設備の構築と運用
6.1 タケダにおける膜法によるWFIへの取り組み
6.2 設備の構築
6.3 運用管理と実績
6.4 高品質と競争力を両立するエンジニアリングを目指して
第7章 RO膜,NF膜,UF膜
7.1 各膜モジュールの形状と構造
7.2 製薬用水の製造に使用される主な膜モジュールの性能比較
7.3 膜ろ過の実際
第8章 医薬品試験用水の製造と管理
8.1 医薬品試験用水の水質確保の重要性
8.2 日本薬局方における医薬品試験用水
8.3 製薬用水と試験用の水
8.4 医薬品試験用水の製造方法
8.5 医薬品試験用水の管理方法
8.6 試験用水使用時の注意点
第9章 微生物迅速法
9.1 微生物迅速法の必要性
9.2 生物粒子計数器
9.3 微生物迅速検査装置Rapica(ML-100)
9.4 海外動向、データの解釈および活用方法
発行にあたって
医薬品の製造において、製薬用水(常水、精製水、注射用水等)は重要原料の一つであり、これらの品質をいかに適切なレベルに維持・管理するかは各製薬企業にとって重大な関心事である。製薬用水の規格は、日米欧薬局方モノグラフに示されており、ほぼ統一されたものになっている。
一方、製薬用水の製造システムについては、日本薬局方ではGMPに任せており、製薬企業では以下のガイドライン等を参考にしている。
・ WHO TRS No. 1033 Annex 3、 Good manufacturing practices: water for pharmaceutical use(2021)
・ PIC/S-GMP Annex 1、 Manufacturer of Sterile Medicinal Products(2022)
・ USP <1231> Water for Pharmaceutical Purposes(2021)
注射用水の製法として超ろ過法を最初に導入したのは日本薬局方(11局追補、1988年)であり、欧州薬局方(EP)が膜法を導入したのは日本に後れること約30年後の2017年であった。これで、日米欧薬局方やWHO における注射用水の製法は統一されたことになる。
そこで、日米欧薬局方における注射用水の製法に関する歴史を記録として第1章に、製薬用水に関する日米欧薬局方の規格試験を第2章に示した。第1章、第2章には、製薬用水関連の試験法やモノグラフの作成、改正にあたった日本薬局方「理化学試験法委員会」ならびに「製薬用水委員会」の活動が凝縮されている。
製薬用水製造設備の設計を第4章に、製薬用水システムの維持管理を第5章に示した。これからの注射用水の製法は、蒸留法から膜法に移行していくであろうことが予想されるので、第6章において、膜法によるWFI構造設備の構築と運用の実例を紹介し、第7章ではRO膜、UF膜、NF膜の特性について詳述した。
また、本書で力を入れた章として、「第8章 医薬品試験用水の製造と管理」、「第9章 微生物迅速法」がある。製薬用水中の生菌数をリアルタイムに計測できる微生物迅速法が国内製薬企業で広まりつつあり、時宜を得た執筆内容になっている。
本書は、製薬用水の製造管理および品質管理に長年携わってこられた専門家の執筆により作成されたものであり、製薬用水に関心のある方々が必要とする最新の知識が収載されている。本書が、製薬用水システムの設計、維持管理、製薬用水の製造、品質管理に携わる技術者の皆様に有益となれば幸甚である。
2023年10月
編 集
佐々木 次雄、白木澤 治
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