品質評価のカギをにぎる
知っておきたい基礎×一歩進んだ応用
訂正情報
Part Ⅰ バイオ医薬品とは、その分析とは
Ⅰ−1 バイオ医薬品とは
Ⅰ−2 抗体医薬品の事例で実際に分析法・品質評価を考える
Part Ⅱ タンパク質を見極めるための分析法
Ⅱ−1 何を分析するのか
Ⅱ−2 タンパク質科学の基礎と取扱い
Ⅱ−3 タンパク質の構造を知る
Ⅱ−4 分光学的性質を利用してタンパク質の構造を知る
Ⅱ−5 糖タンパク質の構造を知る
Ⅱ−6 タンパク質溶液の性質
Ⅱ−7 タンパク質の分子間相互作用
Ⅱ−8 タンパク質の活性
Ⅱ−9 バイオ医薬品の不純物の分析
Ⅱ−10 タンパク質の凝集と凝集体評価
Ⅱ−11 タンパク質の分離分析
Ⅱ−12 タンパク質の安定性分析と安定化設計
Part Ⅲ これからのバイオ医薬品開発と分析法の役割
Ⅲ−1 バイオ医薬品の開発から製造までの課題
近年、バイオ医薬品の分析への関心がますます高まっている。会合凝集体検出における、いくつかの新規な分析法の提案は、その象徴的な例であろう。いわゆる古典的なタンパク質科学は、ここ数十年の分子細胞生物学の興隆と比較して必ずしも目立たなかったものの、確実な進化を遂げており、結果として、バイオ医薬品開発の加速に貢献してきた。しかしながら、いわゆる中堅から若手世代には、見方を変えれば温故知新ともいえるようなタンパク質の物理化学的解析に精通している研究者、技術者が十分にはいないのも事実である。バイオ医薬品開発における米国と本邦との間の最大の相違は、原薬および製剤の開発、製造に関連する戦略立案にあり、その戦略の一つが、この品質関連リスクの評価と管理であった、といっても過言ではない。
2015年に、国立医薬品食品衛生研究所(国立衛研)の川西徹所長(当時)の監修により、横浜市立大学の川崎ナナ教授、国立衛研生物薬品部の石井明子部長を中心に同生物薬品部の研究員らによって、『有効性・安全性確保のためのバイオ医薬品の品質管理戦略-クオリティ・バイ・デザインを取り入れた製造・品質管理』(じほう)が刊行された。同書は、バイオ医薬品開発における、製造・品質管理に関する研究開発の方向性を適切に記述しており、現在、重要な位置づけにある、といってよい。2020年に第2版として改訂され、さらに優れた著書として高く評価されている。しかしながら、同書の内容をより深く理解するためには、記載されている種々の分析法について、より詳細な解説が必要なのではないか、と強く感じるようになった。このような背景のもと、われわれはPHARM TECH JAPAN誌上で分析法に焦点を当てた連載を行った(「バイオ医薬品の分析のコツ品質評価のための基礎と応用」全13回:2017年7月号~2018年8月号)。本書はこの連載をもとに、大幅な加筆修正を行い構成された。
バイオ医薬品の開発ならびに製造において、物理化学的な分析データは、開発候補物質の探索から出荷試験まで品質評価を行ううえで非常に重要な要素である。そこで、本書では、バイオ医薬品の分析に必要となる、タンパク質科学の基礎から応用までを系統的に詳述し、タンパク質の構造、物性、機能を計測するさまざまな物理化学的分析技術を紹介しながら、実際に計測するにあたって知っておきたいスキルや失敗しないコツを解説する。さらに、開発候補物質の探索から原薬や製剤の出荷試験まで、バイオ医薬品開発のさまざまなステージでの各分析技術の活用に関して、ICH ガイドラインや日本薬局方(日局)との関連性も含めて適宜解説することで、目的に応じたバイオ医薬品の品質評価のポイントをつかめるようにした。
本書が、本邦の医薬品開発に携わる研究者・技術者の皆様に有益となれば幸甚である。
2022年7月
編集代表 津本 浩平
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