月刊薬事 2023年5月臨時増刊号(Vol.65 No.7)
薬との「つながり」、薬による「変化」がわかる
第1章 循環器
1 不整脈
篠原 徹二、髙橋 尚彦
2 冠動脈疾患
中村 淳
3 弁膜症
尾辻 豊
4 血栓症
井手 裕也、赤尾 昌治
5 心不全
末冨 建、矢野 雅文
第2章 呼吸器
1 気道閉塞
巽 浩一郎
2 感 染
徳江 豊
3 アレルギー
鹿野壯太郎、權 寧博
4 間質性肺疾患
千葉 弘文
5 呼吸不全
佐藤 晋
第3章 脳・神経
1 運動障害疾患
波田野 琢、服部 信孝
2 てんかん
木村正夢嶺、松本 理器
3 頭 痛
永田栄一郎
4 脳梗塞
藤本 茂
5 認知症
和田 健二
第4章 代謝・内分泌
1 糖尿病
竹本 稔
2 脂質異常症
青野 和人、前澤 善朗
3 視床下部・下垂体疾患
桑原 智子、島津 章
4 甲状腺疾患
内田 豊義
5 副腎疾患
一色 政志
6 骨粗鬆症
田中 伸哉
第5章 消化器
1 胃炎、消化性潰瘍
櫻井 俊之
2 炎症性腸疾患
齋藤 大祐、久松 理一
3 肝疾患
米田 政志
4 膵 炎
圓谷 俊貴、松野 潤、広島 康久、中村 佳史、井上 祐真、林 伸彦、安田 一朗
第6章 腎・泌尿器・体液・血液・免疫
1 腎疾患
長澤 将
2 下部尿路機能障害
三井 貴彦
3 電解質異常
杉本 俊郎
4 貧 血
萩原將太郎
5 急性白血病
脇田 知志、山口 博樹
6 自己免疫疾患
河野 正孝、川人 豊
近年の医学の進歩は著しく、これまで明らかにされてこなかった新規疾患が報告され、成因不明であった病態の解明が進み、さらに疾患の分類・区分の変化によってその治療法は大きく変遷している。科学的根拠に基づいた医療(evidence-based medicine;EBM)の重要性が認識されて久しいが、毎年多くの大規模臨床試験の結果が報告され、エビデンスは日々更新されている。最新のエビデンスに基づく、疾患の診断や治療のガイドラインでさえ、数年も経過すると改訂が必要とされるほど、新規診断法や新規治療薬の導入も年々、加速している。したがって最新の診断・治療ガイドラインに沿った疾患の診断や治療でさえ、最適な医療であるか否かの判断は対応する治療方針決定者の裁量に立脚していると言わざるをえない。このような状況で、個々の患者の疾患の理解と対応に最も有効な助けは、その疾患の病態生理を理解することであろう。すなわち、エビデンスに基づいた治療法の実施において、確固たる裏づけとなる病態生理学的疾患の理解こそが不易の対応指針といえるのではないだろうか。
人が何らかの疾患に罹患し、その時に身体機能がどのような状態になっているのか、またどのような異常を来しているかを明らかにすることは病態生理学的解明とよばれる。疾患の成因や治療薬の開発などは基礎医学や臨床医学応用の結果として進歩するため、疾患の病態生理学的解明も自ずから日々進歩している。研究設備の高度化や大規模データ解析法の進歩も病態生理学的知見の更新につながっている。したがって、科学的根拠に基づくエビデンスと同様に病態生理学的理解も日々、陳腐化しつつかつ進歩する。
本臨時増刊号では、それぞれの疾患における病態生理学研究の第一人者による最新の理解に基づく病態の成因の概説を通して薬物治療の根本的理解を得ることを目的としている。また、疾患の非薬物治療においても病態の理解は不可欠であるため、幅広い領域の読者に有益な情報を提供し、一人でも多くの医師・薬剤師・研究者の手助けになることを期待したい。
2023年5月
大分大学医学部病態生理学講座 教授
小野 克重
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