全国こども病院の与薬・服薬説明事例にもとづく

乳幼児・小児服薬介助ハンドブック 第2版

¥3,960

●全国の事例を収集!「おくすりを上手に飲まるせるために」すぐに役立つ1冊!

くすりを嫌がる乳幼児や小児への与薬に困ったことはありませんか?
本書は、全国の36こども病院(JACHRI会員施設)看護部・薬剤部の服薬介助事例をもとに、小児科領域で使用される156成分について、ジュースなどの飲食物で味やにおいを抑える工夫、適切に与薬するための薬剤の知識や避けたほうがよいこと、さらに子どものがんばる力を引き出すためのヒントなどについてまとめた情報集です。
各製剤の味やにおいの情報を網羅したほか、小児の特性をふまえた薬物療法の基本、小児用製剤の特徴と注意点などについても解説を加えました。
第2版では、JACHRI会員施設に再度アンケートを実施して事例情報を追加、新たに21成分を収載しました。服薬介助の事例を状況とともに理解できるよう内容も充実させました。
 
服薬アドヒアランスを向上させるための事例集として、医師・看護師・薬剤師をはじめとするすべての医療関係者にご活用いただけます!
 
 

 

編著
五十嵐 隆/監
一般社団法人日本小児総合医療施設協議会(JACHRI)/編
発行日
2019年7月
判型
B6変型判
ページ数
304頁
商品コード
52145
ISBN
9784840752145
カテゴリ
目次

総論 乳幼児・小児の疾患の特徴と薬物治療

1.小児の特性をふまえた薬物療法の基本

2.新生児の特徴と薬物療法

3.乳幼児・小児の服薬説明

4.子どもはどうして薬を嫌がるのか?~乳幼児・小児の服薬の実情~

5.小児用製剤の特徴と注意点

 

事例集 こども病院における服薬介助事例 子どもへの与薬 ~小児看護の立場から~

 1.精神神経用薬

2.解熱・鎮痛薬、抗炎症薬

3.鎮けい薬

4.循環器官用薬

5.呼吸器官用薬

6.消化器官用薬

7.副腎皮質ホルモン

8.ビタミン・電解質・無機質類

9.血液用薬

10.免疫抑制薬

11.アレルギー用薬

12.抗菌薬

13.抗真菌薬

14.抗ウイルス薬

15.麻薬

16.その他

書評

【岡本 光宏 先生(兵庫県立丹波医療センター小児科医長)】

 

紅の豚というジブリ映画で、良いパイロットの第一条件について問われるシーンがある。それは経験ではなくインスピレーションだ、と物語は展開する。インスピレーションとは、神が与えた天啓のように突如脳裏に閃く渾身のアイディアを指すのだろう。

こどもが薬を嫌がるというのは、小児科医にとっても薬剤師にとってもありふれた光景だ。ここで活躍できる良い医療者の第一条件はなんだろうか。私は経験が大事だと思っている。こどもにとって薬の味は重要な要素だが、味覚はこどもによって当然異なる。さらに、薬を飲めない理由は味だけではない。見た目、舌触り、飲まなければならないという雰囲気、さまざまな要素が組み合わさって、こどもは薬を拒否する。どれだけ渾身のアイディアであっても、この複雑な服薬拒否問題をただ一つのインスピレーションで解決することは不可能だ。こどもに薬を飲んでもらうときに必要となるのは、医療者の「機転が利く」ことである。「機転が利く」とは、たくさんの経験からたくさんのアイディアを生み出す能力を意味する。

機転が利かない人は、1つか2つしか方法を知らない。これらの方法がうまく行かないとき、彼らは焦り、不安になる。不思議なことに、おとなの不安はこどもに伝わり、不安なこどもはさらに薬を拒否するという負のスパイラルに陥る。一方「機転が利く」人は、Aプラン、Bプラン、Cプランとたくさんの引き出しを持っている。もしAプランがうまくいかなくても、Bプランがある。それが無理でも次のプランがある。例えば、ST合剤をアイスクリームやチョコレートに混ぜても拒薬されたとき、「機転が利く」医療者はどうするか。見た目でわからないように、お菓子の中に薬を入れてみる。それでも無理なら、温かいミルクココアに溶かしてみる。それさえも拒否されたら、いっそのこと味の方向性を変え、ケチャップや海苔の佃煮とあわせてみる。本書(217~221ページ)を読んでいれば、次々にアイディアが飛び出すだろう。

本書には、こどもの服薬を助けるための経験が「ヒント」という形でたくさん詰め込まれている。本書を読み終えたとき、あなたはきっと「機転が利く」医療者と評されているに違いない。

序文

医薬品の成分に起因する苦味、酸味、におい等は子どもの服薬アドヒアランスを低下させる。そのため、フレーバーによる苦味のマスキングや服用しやすい小児用剤形の開発が近年進んでいる。しかしながら、こうした努力によっても、子どもの服薬を阻害する問題は完全には解決されていない。さらに、インターネットなどで子どもの服薬アドヒアランスを改善させるための情報が氾濫しているが、科学的根拠に乏しいものも少なくない。

このような状況の中で、50年以上にわたりわが国の小児医療に関する様々な問題について協議、調査を行っている日本小児総合医療施設協議会(JACHRI)は、子どもの服薬を改善するための工夫や創意について協議会に所属する施設を対象に調査を行った。その結果を、本書「乳幼児・小児服薬介助ハンドブック」にまとめ、2013年に第1版を発刊した。子どもの服薬アドヒアランスを改善するためのわが国初の実践的な情報書であった第1版は大変好評であった。この度、再度調査を行い、小児医療の現場で汎用される薬の薬学情報を増やし、子どもの服薬アドヒアランスを向上させるための具体的な工夫を盛り込んだ第2版を刊行した。

小児医療の現場で本書が大いに利用されることを願う。さらに、今後も本書の内容が益々充実し、子どもの服薬アドヒアランスを向上させるための貴重な情報を提供できるよう、多くの医療従事者から有益な情報を御提供いただければ幸いである。

最後に、数多くの貴重なデータを提供いただいた製薬企業各社と、編集業務に御尽力いただいたJACHRI事務局の田原真理氏に、心より御礼申し上げる。

 2019年6月

一般社団法人日本小児総合医療施設協議会理事長

国立研究開発法人国立成育医療研究センター理事長

五十嵐 隆