こどもの医療に携わる感染対策の専門家がまとめた
はじめに 小児感染対策の特殊性
小児感染対策の特殊性
1章 小児感染対策の体制
1.1 小児病院における感染対策の体制
1.2 大学病院における小児感染対策担当者
1.3 市中病院における小児病棟
1.4 クリニックでの感染対策
1.5 新型インフルエンザ等対策における地域連携
1.6 JACHRI 小児感染管理ネットワーク(PicoNET)
1.7 感染対策とコストの問題
2章 小児感染対策の基礎知識
2.1 標準予防策
2.2 感染経路別予防策
2.3 血管内カテーテル関連血流感染予防
2.4 カテーテル関連尿路感染予防
2.5 人工呼吸器関連肺炎予防
2.6 手術部位感染予防
2.7 感染症サーベイランス
2.8 微生物検査(検体の出し方)
2.9 予防接種
2.10 RS ウイルス感染症のパリビズマブによる予防
2.11 医療従事者への予防接種・抗体価管理・結核管理
2.12 針刺し後の血液・体液曝露予防
2.13 職員が感染症を発症した場合の対応(一般的な急性呼吸器感染症、胃腸炎など)
3章 小児伝染性疾患
3.1 麻疹
3.2 風疹、先天性風疹症候群
3.3 水痘、帯状疱疹
3.4 流行性耳下腺炎
3.5 百日咳
3.6 インフルエンザ
3.7 流行性角結膜炎
3.8 結核
3.9 クロストリディオイデス(クロストリジウム)・ディフィシル感染症
3.10 新型コロナウイルス感染症
3.11 曝露後予防(麻疹、水痘、百日咳、インフルエンザ、侵襲性髄膜炎菌感染症)
4章 抗微生物薬適正使用
4.1 小児における薬剤耐性菌の問題と抗微生物薬適正使用
4.2 病院における抗微生物薬適正使用支援プログラム
4.3 外来における抗微生物薬適正使用支援プログラム
4.4 新生児・NICU における抗微生物薬適正使用
5章 アウトブレイク時の対応
5.1 感染症の集団発生時の対応(院内での危機管理・保健所への届出)
5.2 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(新生児室)
5.3 RSウイルス
5.4 アタマジラミ、疥癬
5.5 ノロウイルス、ロタウイルス
5.6 耐性グラム陰性桿菌
5.7 新興感染症対策
5.8 海外からの受診者(輸入感染症を含む)
6章 小児感染対策の実践
6.1 小児救急・入院・外泊時のトリアージ
6.2 隔離時に気をつけること
6.3 面会
6.4 子どもと親への指導・説明
6.5 おもちゃ・プレイルームの管理
6.6 点滴の管理
6.7 栄養物品管理
6.8 おむつの管理
6.9 リネンの管理
6.10 環境整備
7章 部門別の感染対策
7.1 新生児集中治療室(NICU)
7.2 産科病棟における新生児室
7.3 産科病棟
7.4 小児集中治療室(PICU)
7.5 無菌室(クリーンルーム)
7.6 手術室
7.7 外来部門
7.8 院内学級
7.9 院内保育所
7.10 重症心身障害児病棟の管理
7.11 療育
7.12 在宅
7.13 薬剤部門
7.14 栄養管理部門
7.15 放射線部門
7.16 臨床検査部門
7.17 リハビリテーション部門
7.18 動物介在介入(ファシリティドッグを中心に)
◆石川 洋一 先生(明治薬科大学 小児医薬品評価学 教授)
小児感染症は、基本的に成人の感染症対策の知識で対応できるものではないと現場で強く感じる。やはり小児期の感染症については、専門家から経験を含めて学ぶのが一番である。薬剤師として単なる学問ではなく、臨床現場の実際を学ぶには本書が最適である。今回ブラッシュアップされた第2版が刊行され、手元に置く好機となった。
最近のコロナ感染症もそうだが、小児期にはウイルス感染症が多い。伝染性が高いものが多いのも小児期感染症の特徴である。ところが、薬剤師は抗菌薬が使われる細菌については知識が豊富でも、ウイルス感染症についてはほとんど知識がない。
本書ではこのような感染症について、原因・病態・治療のみではなく、具体的な患者・曝露者・外来などへの対応策が詳細に述べられている。感染予防についても薬剤師は消毒剤含めて広く知識が必要だが、本書では小児期の感染症に係る標準予防策から感染経路別・人工呼吸器・手術部位・カテーテル系の問題に至るまで、詳細な予防策が記載されている。
子どもと保護者への指導・説明は重要で、おもちゃ・プレイルームの管理についても、どのような消毒処理が必要かは、考えたこともないのではないだろうか。
小児を受け入れる病院、小児科・産科専門の病院等であればなおさら、外来から、NICU・産科病棟・PICU・手術室まで、各部門の感染対策は薬剤師として必ず参画する必要がある。付録の洗浄滅菌に係る知識まで、もれなく活用できる貴重な書籍である。
◆岩田 健太郎 先生(神戸大学病院 感染症内科 教授)
小児診療での感染対策には独特の難しさがある。そもそも小児の疾患では感染症のウェイトが大きい。呼吸器感染症、消化器感染症など、外来でも病棟でも感染症はとにかく「多い」のだ。おもちゃ、プレイルームといった独特の事情もあり、薬剤耐性菌対策にも独特の工夫がいる。
とはいえ、感染対策における「原則」は変わらない部分も多い。
何かを比較するとき、その違いに着目する考え方を別化性能、共通点に着目する考え方を類化性能という。どちらかというと、人は別化性能を強く発揮しがちだ。「あいつと、こいつはここが違う」と主張しがちで、「ま、どちらもおおむね一緒じゃね?」という言い方よりも好んで用いられる。世の中に差別や偏見がなくならないゆえんだが(マジで)、「学者」も別化性能により注目しがちなバイアスをもっている。だから、類化性能を意識的に発動させ、両者をバランスよく使い分ける必要がある。
本書を通読すると、小児診療における「独特な」事情という別化性能的コンテンツと、「感染対策は原則誰でも同じ」という類化性能が絶妙なバランスで配置されているな、と感じる。知性と理性のバランスがとれた宮入烈先生の編集の妙だと思う。だから、本書は感染対策のプロが、小児感染対策の独自性を学びたい場合にもとても有用だと思うし、小児診療に長けたプロが、感染対策の原理原則を学び、実践したい場合にも有用だ。「マニュアル」なので手元に置き、繰り返し開いて活用したいと思う。
「小児感染対策マニュアル第2版」の発刊に際して
小児における感染症対策は、成人とは異なる面を多くもちます。胎児、出生後の新生児から乳児、幼児、学童へと成長する過程において、小児は母親から与えられた液性免疫が減少する一方、常に侵入してくる様々な病原体に対して、自らの免疫機能を駆使して抗体や細胞性免疫などの抵抗力を獲得してゆきます。さらに現在では、予防可能な重篤な感染症に対し、積極的に予防接種が実施されています。その結果、過去に多くの子どもの命を奪ってきた重篤な感染症が激減しています。しかしながら、健康な成人に比べ、乳幼児は感染症に罹患しやすいという生物学的特性を完全には払拭することはできません。すべての病原体に対する有効なワクチンは、現代の科学技術をもってしても作ることはできません。さらに、病原体自身が常に変異しており、仮に有効なワクチンができたとしても、新しい変異に対応するワクチンの作製が必要になります。
本書は、日本小児総合医療施設協議会(JACHRI)に加盟している医療施設の小児科や感染症科の専門医が協力して、子どもの感染対策のために必要な体制づくり、子どもの感染対策に関する基礎知識、小児感染症のアウトブレイク対策などについて、エビデンスに基づく具体的な対応策やアイデアをまとめ、2015年に第1版が作られました。第1版は大変好評で、刊行後に多くの関係者から支持を戴けました。感染症に関する新たなエビデンスが、その後多数発出されており、その中でも重要なエビデンスを踏まえ、ブラッシュアップした第2版を今回刊行する運びとなりました。本版においても、臨床現場で必要とされる具体的な感染症対策が、図表や画像をできるだけ用いてわかりやすく記載されています。
医療施設だけでなく、保育施設や学校などの子どもが集団で集まる施設においても、感染症対策はリスクマネジメントの点からも極めて重要です。小児に関係する医療従事者だけでなく、小児に関わる施設で活躍される方にとっても、本書は小児の感染対策を理解し、実行する上で有用です。本書が多くの方に利用されることを願っています。
2022年8月
一般社団法人日本小児総合医療施設協議会理事長
国立研究開発法人国立成育医療研究センター理事長
東京大学名誉教授
五十嵐 隆
価格 |
---|
SKU |
評価 |
割引 |
ベンダー |
タグ |
重さ |
在庫 |
簡単な説明 |
Description here
Description here