小さな異変もこぼさず拾える!
第1章 発熱
Day 1 風邪らしくない経過
Day 2 重症な発熱
Day 3 発熱以外の所見がない
Day 4 生後3カ月未満の発熱
Day 5 肺炎かもしれない聴診所見
Day 6 肺音の聴き分け方
Day 7 迅速検査が必要な所見
Day 8 咽頭で診るべき場所
Day 9 中耳炎が疑われる鼓膜所見
Day 10 発熱へのファーストタッチ
BrushUp 発熱の腕試しテスト
第2章 呼吸器
Day 11 緊急性の高い咳
Day 12 3週未満の咳
Day 13 3週以上続く咳
Day 14 抗菌薬が必要な咳
Day 15 長引く鼻汁
BrushUp 呼吸器の腕試しテスト
第3章 消化器
Day 16 腹痛でまずすること
Day 17 虫垂炎かもしれない腹痛
Day 18 胃腸炎らしくない下痢
Day 19 注意すべき嘔吐
Day 20 脱水への救急対応
BrushUp 消化器の腕試しテスト
<コラム>ここが気になる! 子ども診療のギモン
◆解熱薬で熱が下がらなかった場合って重症ではないんですか?
◆生後3カ月未満でも尿路感染であれば髄液検査は省けますか?
◆泣きやんでくれず、聴診ができないときはどうすればいいですか?
◆Centor criteria(溶連菌性咽頭炎スコア)は、小児科でも使えますか?
◆喘息診断の手がかりとなる「アトピー素因」ってなんですか?
◆なぜ抗ヒスタミン薬による鼻炎の診断的治療って難しいんですか?
◆小児科研修のアドバイス! 有意義な研修には準備が必要
◆そもそも下痢ってどう定義されているんですか?
◆嘔吐のとき、迅速検査はしたほうがいいですか?
【はじめに】小児科診療のハードルを下げたい(抜粋)
子どもを診るのは小児科医の仕事だと思っていた。だが、地方では小児科医不足が進み、小児科医だけで子どもを診ていける時代ではなくなった。これは、2017年に兵庫県丹波市で地域医療をするようになって実感したことだ。私が知らなかっただけで、きっとずいぶん昔からこの問題は存在していたのだろう。これからの子どもを支えていくには、内科や研修医の先生たちの力が必要だ。そう気づいたときから、私はもっと簡単に子どもを診療できないのか、ということばかりを考えるようになった。(中略)
明確で具体的。これは本書のキーワードである。「明確で具体的なポイント」を研修医に伝えるには、どうすればいいか。最も簡単なのは、実際に診察している研修医の隣に指導医がついて、気を付けるべきポイントを毎回チェックしていけばいい。だが、私には私の仕事もあるので、当院の研修医であっても、べったりくっついてあげることはできない。私は研修医を戦力として期待しているし、研修医もその期待に対してなんとなく喜んでいるようにみえるので、私にべったりとチェックされるのも彼らの本意ではないだろう。物理的にはそばについているわけではないが、精神的にはポイントをチェックされているような状況になればいいのだが。そこで私は、また書籍の力を借りることにした。対話形式の本を作り、明確なポイントを示していく。具体的な症例をベースとし、研修医に不足している経験を補う。研修医がポイントを導き出し、指導医がチェックする。対話方式は特段珍しい書き方ではないが、「明確で具体的」を実現するには、研修医と指導医の対話のなかで生まれるチェックポイントが大切だと考えた。
病名がついてなくても難しくない
プライマリケア医や研修医の先生たちが普段診ているような患者は、たくさんのプロブレムを同時にもっていることだろう。それに比べて、子どものプロブレムというのは1つか2つだ。既往歴や合併症は少なく、小児科診療は非常にシンプルである。そもそも、私は2つ以上のことを同時に考えるのが苦手だ。?野家の店員さんが注文、配膳、後片付け、会計までを1人でこなす様子を見て、「絶対に私にはできない」とつくづく思う。私が?野家で働くためには、せめてメニューを牛丼並盛だけにしてもらわなければならない。プライマリケア医や研修医の先生たちは、きっとトッピングもセットメニューも何でもありでも対応できるように修練を積んでいるはずだ。先生たちであれば、もっと上手に子どもを診られる。
小児科診療はシンプルである。ハードルは高くない。本書の「明確で具体的」なチェックポイントで、そう実感していただければ本望である。
岡本光宏
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