学びと評価の指標
訂正情報
第1部 総論
Ⅰ 総論・目的
Ⅱ キャリアマップ・到達目標・活用方法
第2部 基本能力開発プログラム
第1章 基本能力開発新人採用コース(おおむね採用後6カ月)【BN】
Ⅰ オリエンテーション事項
Ⅱ 社会人マナー事項
第2章 基本能力開発実務BASICコース(おおむね採用1~2年)【BB】
Ⅰ 基本姿勢
Ⅱ 調剤等基本的技術
Ⅲ 専門的実践能力
Ⅳ 薬剤業務おける教育的・管理的側面
Ⅴ 臨床研究・プレゼンテーション
第3章 基本能力開発実務ADVANCEコース(おおむね採用3~5年)【BA】
Ⅰ 基本姿勢
Ⅱ 調剤等基本的技術
Ⅲ 専門的実践能力
Ⅳ 薬剤業務おける教育的・管理的側面
Ⅴ 臨床研究・プレゼンテーション
第3部 管理能力開発プログラム
第1章 副薬剤部科長コース【MS】
Ⅰ 基本姿勢とスキル
Ⅱ マネジメント能力
Ⅲ 薬事に関する専門的知識
Ⅳ 組織の運営状況に関する知識
Ⅴ 医療制度に関する知識
Ⅵ 医療安全対策に関する知識
Ⅶ 教育と研究
Ⅷ 経営管理に関する基礎知識
第2章 薬剤部科長コース【MM】
Ⅰ マネジメント能力
◆桒原 健 先生(大阪医科薬科大学 薬学部 臨床薬学教育研究センター 特任教授)
本書は2016年に国立病院機構が作成した「国立病院機構薬剤師能力開発プログラム」をもとに、多くの医療施設で活用できるよう、全国国立病院薬剤部科長協議会で検討を加え書籍化されたものである。病院薬剤師に求められるそれぞれの業務スキルを、新採用からおおむね採用3~5年までの基本能力開発プログラムと、副薬剤部長・薬剤部長に必要な管理能力開発プログラムに分け、一般目標(GIO)と到達目標(SBO)を示し、具体的に押さえておくべきポイントと、それぞれの目標に関する解説や習得のコツが記載されている。
全国国立病院薬剤部科長協議会は国立病院機構病院に加えて、国立高度専門医療研究センター、国立ハンセン病療養所の薬剤部科長、副薬剤部科長で組織されている。これら病院に勤務する薬剤師は、それぞれの施設を異動し昇任するシステムがとられており、多くの薬剤師は大病院から中小病院を経験する。そのため、各施設間での人材育成方法に差が出ないシステム構築が必要となる。また、国立病院機構では病院薬剤師のキャリアマップを示しており、それぞれのキャリアにおける到達目標が示されている。本書は、学習者・教育者それぞれの活用方法が示されており、自己研鑽・人材育成に役立てることができる。
ぜひ、多くの病院薬剤師の先生方に手に取っていただき、自分はどこまで達成できているか、スタッフ教育はどこまで進んでいるかなど、それぞれの業務達成度を確認し、さらなる業務能力の向上にご活用いいただければ幸いである。
◆山田 清文 先生(名古屋大学医学部附属病院 教授・薬剤部長)
本書は、国立病院機構が作成した国立病院機構薬剤師能力開発プログラムをもとにした書籍である。第1部総論では、本書の目的、活用方法がまとめられ、第2部基本能力開発プログラムでは、新人から採用後5年くらいまでの薬剤師に求められる知識・技能・態度について、到達可能で平均的な目標が定められ、習得のコツを含めまとめられている。第3部管理能力開発プログラムは、副薬剤部(科)長(主任)、薬剤部(科)長に求められるマネジメント能力の開発プログラムとなっている。
スキルアップを目指す新人・若手病院薬剤師にとっては、自己研鑽のための貴重なプログラム書であり、後進の指導を担当する中堅薬剤師にとっては教育指導のための参考書である。さらに、管理者へのキャリアアップを目指す薬剤師にとっては、薬剤部門の管理運営に必要な能力開発についてまとめられた数少ない書籍となっている。卒後初期研修は、ジェネラリストとしての能力開発に極めて重要であり、その後の特定領域の専門研修の土台となるものである。
病院薬剤師としてキャリアをスタートするにあたり、10年後、20年後の自分自身のスキルとキャリアを想像し、理想とする病院薬剤師像を考えるうえでも参考となる。
◆佐々木 忠徳 先生(昭和大学病院 薬剤部長/昭和大学 統括薬剤部長)
病院薬剤師の生涯教育関連のテーマとして、キャリアアップやラダー作成のための研修、あるいは管理者育成などを取り上げられないかということをよく耳にします。確かに重要な課題であり、同時に多くの施設の悩みであるからではないかと痛感しています。
本書の特徴は、基本能力開発プログラムとして、新人採用コース・BASIC コース・ADVANCE コース、管理能力開発プログラムとして副薬剤部科長コース・薬剤部科長コースがあり、系統的に学ぶ形式でまとめられています。生涯学習では薬剤師としての臨床的スキルの維持・向上や専門性を高めることに終始することが多いですが、キャリアを積み、病院のなかで組織としての関わりや成果を期待され、管理者としての資質やその場で重大な案件について迅速な決断を求められる機会が増えるようになって、初めてそれらの重要性に気づかされるのが現状です。
本書を活用することで、薬剤師教育計画や教育プログラムを構築するための一つのツールになり、解決につながります。その理由に教育の手法として、一般目標、行動目標を明確に目標設定されていることに加え、これらが知識・技能・態度に分類され、学ぶプロセスが具体的に書かれていることです。
いままで以上に、地域連携などの薬剤師に求められる課題や医療・薬物療法の質的向上に病院薬剤師の関わりに期待が高まるなか、専門性に加え管理という概念まで踏み込んだ、これからの病院薬剤師の人材育成のための必須ガイドになると思います。
◆清水 淳一 先生(東京都済生会向島病院 薬剤科)
本書は、病院薬剤師の自己研鑽や人材育成に役立てるために作成されたものであり、「知識」「技能」「態度」の習熟度・達成度を明確に評価する指標を示したものです。病院薬剤師のキャリアを5つのステージに分け、それぞれのステージにおける到達目標と、到達目標を達成するためのGIO(一般目標)、そのGIOを達成するためのSBO(行動目標)を示しています。解説では、SBOを達成するために必要なエッセンスをまとめ、さらに深く学びたい薬剤師が掘り下げられるようその参考文献も記載されています。病院薬剤師にとってあまり得意とはいえない診療報酬やマネジメント、経営管理などについてもわかりやすく記載されています。
私自身この本を開いたとき、前に勤務していた病院で「人事の見える化」に苦労していた時代を思い出しました。職員に自己評価をしてもらい、その自己評価をもとにヒアリングを行ううえで、共通の指標となる「能力評価行動基準表」の作成に悩んでいたからです。その当時にこの本があったら、あんな苦労はなかったと感じました。
後輩の指導に悩むマネージャー・ミドルマネージャーには自己評価と後輩指導のために、病院薬剤師を目指す薬学生から新人・若手・中堅病院薬剤師には自己評価ばかりでなく、病院薬剤師として習得すべき業務を知るために、この本が役立つと思います。また、薬剤師の業務に境界線があるわけではありません。薬局に勤務する薬剤師の先生方にも共通する項目があります。参考にしていただけると幸いに存じます。
病院薬剤師のためのスキルアップ×キャリアアップ 学びと評価の指標
近年、病院薬剤師の業務は多岐に渡り、業務を遂行する環境は著しく変化している。新人教育に始まり、専門的分野のスキルを磨き、さらにはマネージャークラスへと成長していく過程において、包括的な教育体制を整備している組織は少なく、時代に合わせた病院薬剤師の育成制度が求められている。
全国国立病院薬剤部科長協議会(以下、薬剤部科長協議会)は、各施設における薬剤部門の向上及び発展並びに会員の親睦を図る目的で、国立病院機構140病院、国立高度専門医療研究センター(ナショナルセンター)8 病院、国立ハンセン病療養所13 病院の薬剤部科長、副薬剤部科長により組織されている。全国に7つの支部(北海道、東北、関東信越、東海北陸、近畿、中国四国、九州)を置き、それぞれの地区において活発に活動を行っている。
国立病院機構では、2016 年に次代の人材育成を担う指導的能力を養うことを目的に「国立病院機構薬剤師能力開発プログラム( National Hospital Organization Pharmacist Ability Development )」を作成し、これを基盤に人材育成を展開してきた。薬剤部科長協議会においてもこれを推奨し、各地区で研修会を開催するなど、病院薬剤師の能力向上に努めてきた。
本書は、薬剤部科長協議会におけるキャリアアップや自己研鑽のための指標及びこれらに対する方略などのノウハウを活かし、病院薬剤師の卒後教育にもお役立ていただけるよう作成した。また、成長過程で必要とする知識・技能・態度を再構築し解説を加えて示すとともに、さらに深く学ぶためのヒントやエッセンスをちりばめたものである。そのため国立病院関係の薬剤師のみならず、病院薬剤師を目指す薬学生から新人薬剤師、中堅薬剤師、マネージャークラスの薬剤師まで幅広い層の薬剤師にとって、自らの成長の指標となる図書と考えている。
本書をそれぞれの自己研鑽、人材育成に役立てていただき、それが薬剤師の資質向上に、強いては国民の医療に貢献できる薬剤師の育成に繋がれば望外の喜びである。最後に本書の出版にあたり執筆いただいた方々並びにご協力いただいた関係者に心より御礼申し上げる。
2020 年12 月
編集代表
国立成育医療研究センター
薬剤部長 山谷 明正
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