大阪大学医学部附属病院薬剤部 教授/薬剤部長 奥田 真弘先生
薬剤師は、がんや感染症などの特定の領域に限らず、ジェネラリストとしてあらゆる領域の薬物療法に対応が求められる。薬物療法は年々高度化・複雑化し、薬剤師が修得すべき知識やスキルも増加している。このような情勢を背景に『薬剤師のためのナレッジベース』が出版された。本書は千葉大学医学部附属病院の薬剤部員によって執筆され、編集者は日本医療薬学会の薬物療法指導薬剤師にも認定されている。
本書では、14領域55疾患の薬物療法が取り上げられ、セクションごとに1)治療薬チェックリスト、2)ガイドラインに基づく基本情報、3)薬物治療、4)合併症・患者背景に応じたアプローチが解説されている。治療薬チェックリストでは、汎用薬剤がリスト化され、各治療薬の特徴、処方監査(禁忌事例など)、モニタリング、服薬指導の要点がまとめられている。チェックリストは薬剤ごとの索引を兼ねているため、薬物治療の該当ページに容易にたどり着くことができる。また、本書のサイズはA5変形判とコンパクトなため、日常業務の傍ら持ち歩いても苦にならない。
本書では、薬剤師が日常的に関わる幅広い疾患領域に対応した薬学的管理のポイントがわかりやすく示されており、病院薬剤師の新しい定番書籍となり得るポテンシャルを感じさせる。余談かも知れないが、本書が対象とする疾患領域は、日本医療薬学会が認定する薬物療法専門薬剤師の研修ガイドラインに定められた疾患領域の大部分もカバーしている。
本書は、新任の薬剤師だけでなく、ジェネラリストとして専門性を高めたい幅広い薬剤師にも有用と考えられ、身近な参考書としてお奨めしたい。
帝京平成大学薬学部薬学科 教授 亀井 美和子先生
ナレッジ(Knowledge)は単なる知識を意味するものではなく、「組織で蓄積できる知識・経験・事例など付加価値のある体系的な情報」であって、それを一元的に集めたデータベースが、書名の「ナレッジベース」である。監修者の石井伊都子先生が冒頭に書かれた説明に妙に納得しながら本書を開いた。そして、執筆者名に並んだ千葉大学医学部附属病院薬剤部の先生方のお名前を見て、本書がまさに、大学病院薬剤部において蓄積された知識や経験に基づいて制作された薬剤師のためのナレッジベースであると確信し、読み進めた。
確信のとおり、本書は薬剤師として患者の薬物治療に関わるうえで知っておかなければならない知識・経験・事例などの情報がぎっしり詰まっていた。薬物療法に関わる疾患領域が網羅され、疾患領域ごとに情報が整理されている。
どのように情報が整理されているのか。その特徴は、まず、治療薬のチェックリストがあり、治療薬全体の特徴、処方監査、モニタリング、服薬指導のチェックから始まり、治療ガイドラインでの治療方針などの基本情報の確認へと続く。さらに、薬物治療についての各論があり、最後に、患者背景に応じてどのようなアプローチが必要なのか、経験や事例に基づく薬剤師としての気づきのポイントが記述されている。つまり、患者の特性を踏まえた薬物治療を提供するために薬剤師が必要とする情報(薬・ガイドライン・薬剤師業務)が漏れなく記述されている。
臨床現場の薬剤師業務に役立つことは間違いないが、私のように現場から離れている者にとっては大変勉強になる書籍である。薬学実務実習や国家試験の勉強に取り組む学生、新人薬剤師にもぜひ薦めたい。
滋賀大学医学部附属病院薬剤部 教授/薬剤部長 寺田 智祐先生
ナレッジベース(knowledge base)とはなんだろうと本書をめくると、「組織で蓄積できる知識・経験・事例など付加価値のある体系的な情報」をまとめたデータベース(data base)と示されています。一読すると、確かにその通りだと思うのですが、それ以上に、臨床の最前線に立つ薬剤師らによって紡がれた、55章の短編小説のように感じました。
各章の構成は統一されており、STEP1(治療薬チェックリスト)→STEP2(ガイドラインに基づく基本情報)→STEP3(薬物治療)→STEP4(合併症・患者背景に応じたアプローチ)と、基本情報から応用情報まで網羅されています。STEP1では、治療薬の特徴、処方監査・モニタリング・服薬指導に必要な情報が、一目でわかるチェックリストとして整理されています。STEP2では、その疾患のガイドラインに基づいた疫学や治療方針に関する情報が要約され、STEP3はSTEP1とリンクしながら、あらためて治療薬のポイントが解説されています。そして、最後のSTEP4では、超高齢化時代に即した、合併症などがある場合への対応で結ばれています。薬剤師は、どうしても薬の情報のみを求めがちですが、疾患の全体像を把握しながら薬物療法のノウハウを確認できることが、本書の最大の特徴と言えるでしょう。
本書は、現場経験の少ない薬剤師はもちろんですが、中堅以上の薬剤師であっても、専門でない領域の確認に活用しやすいと思います。さらに、病態から治療薬まで臨床の流れを効率的に学ぶことができるため、実務実習を行う学生や施設にとっても重宝されると思われます。まさにオール薬剤師にとって、必携の1冊と言えるでしょう。
慶應義塾大学薬学部 医療薬学・社会連携センター 社会薬学部門 教授/
慶應義塾大学薬学部附属薬局 薬局長 山浦 克典先生
データベースは情報が有機的に整理され、検索・活用が容易な情報の集まりである。本書は千葉大学医学部附属病院薬剤部の知識・経験を集積し、55疾患に整理した病院・薬局薬剤師向けナレッジベースである。
本書の活用法として、まず、担当する患者の疾患で使用される標準的な治療薬をチェックした後、ガイドライン情報を確認し、続いて服薬指導や患者モニタリングのポイントなどを業務に応用する流れがイメージできる。
本書の特徴は、治療ガイドライン情報を見開き2ページというコンパクトサイズにまとめて疾患毎に配置した点である。これにより、一目でガイドラインの概要を押えられ、疑義照会や患者フォローアップ後の医師への処方提案の際にも、心強い存在になると思われる。
また、治療薬ごとに設けられた処方監査や患者モニタリング、服薬指導のポイントのそれぞれに、執筆者である大学病院薬剤師42名が長年蓄積した知識・経験が凝縮されている。さらに、じっくり文書を読む時間がない臨床現場でも、わかりやすい図表を要所に配置し情報の確認を助けるよう、実用面を重視した構成となっている。これに加えて、食事療法や運動療法の情報は、慢性疾患患者をかかりつけとする薬局薬剤師にとって、生活指導に活かせるありがたい情報に違いない。
薬機法改正に伴い、患者のフォローアップや医師への情報提供が必須となる中、本書は保険調剤、在宅訪問業務に従事する薬剤師の座右の書として手放せない1冊となるだろう。また、実務実習生の指導に当たる指導薬剤師にとっても、ガイドラインや処方監査、服薬指導のポイントが1冊に詰まった本書は、大変使い勝手がよいと思われる。ぜひ、実務実習の指導書としても活用してほしい。
ナレッジベース(knowledge base)という言葉をご存じでしょうか。ナレッジとは単なる知識を表すのではなく、「組織で蓄積できる知識・経験・事例など付加価値のある体系的な情報」を示しており、それらを1カ所にまとめたdata base のことを指します。組織はナレッジベースを共有し利活用していくことで、業務の効率が上がります。
医療は、一定水準の質の担保と医療安全の確保が大前提です。しかし、医療用医薬品の品目数は約16、000と莫大であり、多領域にわたりガイドラインが作成されています。私たち薬剤師は、医薬品情報を理解し、処方提案やモニタリングなど薬学的管理を通して患者の薬物治療に貢献していますが、これだけの情報を自己学習で習得するには自ずと限界があります。これをカバーしてくれるのが、本書『薬剤師のためのナレッジベース』です。
本書は、55の疾患別に分類した医薬品について、①治療薬チェックリスト、②ガイドラインに基づく基本情報、③薬物治療の3段階で整理しました。各医薬品とガイドラインでの位置づけを明確にし、特徴、処方監査、モニタリング、服薬指導と薬剤師業務の一連の流れを本書に落とし込みました。まさに、薬・ガイドライン・薬剤師業務を組み合わせたナレッジベースです。どうぞ、本書を手にとっていただき、日常業務にお役立てください。
千葉大学医学部附属病院薬剤部 教授・薬剤部長
石井伊都子
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