伝わるカルテ

Before & Afterで書き方のコツがわかる

¥3,300

●研修医のカルテを見てきた著者が教える、真に研修医が求める内容を凝縮。
●ちょっとしたコツと工夫でカルテは劇的によくなる。診療がうまく回る。
●指導医、他科の医師、薬剤師、看護師……相手にしっかり伝わるカルテを書こう!
 
系統だって教わることが少ないカルテの書き方。それだけに経験やセンスの差が出やすいものです。本書は、長年にわたり研修医に教えてきた指導医が、初診記録、経過記録、救急記録、手技記録など、種類に応じた書き方のコツをレクチャー。Before & Afterなどの豊富な事例が載っているので、実際にどう書けばよいかが具体的にわかります。電子カルテが主流のこの時代、医師だけでなく多職種が内容を理解できるカルテ作成術を身につけることができるはずです。
編著
牧野 英記/著
発行日
2023年5月
判型
B5判
ページ数
148頁
商品コード
55139
ISBN
9784840755139
カテゴリ
目次

Lesson 1   カルテの基本

 カルテの書き方はじめの一歩

Lesson 2   カルテ記載の落とし穴

 あなたがカルテをうまく書けない4つの理由

Lesson 3   SOAP/経過記録

 SOAPのおさらいと経過記録の書き方

Lesson 4   経過記録

 型がないので案外難しい……カルテ力が試される記録

Lesson 5   インフォームドコンセント記録

 IC記録は早く正確に、そしてわかりやすく

補  講    患者向け説明文書

 患者向け説明文書を使ってwin-winの関係に!

Lesson 6   初診記録①

 情報盛りだくさん、困ったときのよりどころ!

Lesson 7   初診記録②

 悩ましいプロブレムリスト作成のコツと鑑別診断

Lesson 8   手技記録

 患者向け説明文書を使ったICと要点を押さえた記録を

Lesson 9   集中治療記録

 分刻みで変動しうるICUではオリジナルの書き方がある

Lesson 10 救急記録

 エラーを起こさないカルテ記載、わかりやすいプレゼン

Lesson 11 退院時サマリー

 あと○日でサマリーの期限,早く書かないと……

Lesson 12 外科系カルテ

 全力投球カルテと継ぎ足しカルテ

Lesson 13 医療文書①

 コツをつかめば簡単! 医療文書マスターを目指せ!

Lesson 14 医療文書②

 いろんな医療文書の種類と書き方のポイント

 

巻末付録

1 知って得する略語集

2 知っておきたいカルテの法的根拠

序文

私は毎年5月頃、当院の1年目の初期研修医を対象に「カルテの書き方」のレクチャーをしています。

ちょうどカルテの記載に迷う時期なのか、「すごくわかりやすかった」と言ってもらえることもあり、実際、研修医の皆さんのカルテもレクチャー前よりわかりやすくなったと思うので、多少は役立っているのかなと考えています。

なぜ呼吸器内科医である私が「カルテの書き方」の本を書くようになったのか、不思議に思う先生もいるかもしれません。私自身、もともとカルテの書き方に興味があったわけではなく、これまで誰かに系統立てて教えてもらったこともなく、何となくカルテを書いていました。

一方で長年、臨床研修病院に勤務していたため、研修医の先生と接する機会が多く、おのずと彼らのカルテを見ることが多くなりました。毎年見ていると、1年目の研修医の先生は、特に4~5月頃は新しい環境に対応するのが手一杯で、カルテの書き方はお世辞にもいいとは言いがたい状況です。

しかし、少しコツを伝えるとびっくりするくらい成長したカルテになり、とても驚かされます。このようなことを繰り返すうちに、最初から最低限のことを伝えておけば、研修医の先生も、それを指導する各科の指導医の先生も助かるんじゃないかと考えるようになりました。

そこで、自分なりに勉強してカルテの書き方のコツを伝えるようになり、院内でもレクチャーをする機会をいただき、それを病院のHPにも載せるようになったところ、じほうの方からメールをいただきました。正直、最初は半信半疑でしたが、「自分の病院の研修医だけでなく、全国の研修医にも同じように迷える子羊たちがいるのではないか(笑)。そういう人たちの役に立てるなら本望だ」と思い、思い切ってお話を受けることにしました。

お話をいただいたのが2021年6月で、コロナ禍の真っ只中でした。呼吸器内科はコロナ診療の最前線で戦っていましたので、コロナの波が下火になったら原稿を書く、流行してきたらお休みということを繰り返していたため、完成までに1年8カ月という期間がかかってしまいました。仕事中心でただでさえ家族で過ごす時間が少ないうえに、書斎にこもりがちになった私に、時に厳しく、時に優しく寄り添ってくれた妻に感謝しています。

研修医向けの本を書くにあたり、研修医からのフィードバックをもらうことは必要不可欠でした。原稿全般にわたって、研修医目線での率直かつ的確な意見をくれた平山龍太郎先生(本書に登場するイラストは彼がモデルです)、外科領域の「継ぎ足しカルテ」のキーワードをくれた奈路田悠桃先生、その他にも意見をいただいた松山赤十字病院の研修医の先生のサポートなしには、真に研修医の求める内容にはならなかったと思います。この場を借りてお礼を申し上げます。

本書は一般論だけでなく、できる限り具体例を挙げ(Before & After、説明文書,研修医がカルテをうまく書けない理由など)、現場ですぐに使ってもらえるように配慮しました。また、IC(インフォームドコンセント)記録では、現場の空気感も伝えられるように踏み込んで記載しました。これらは他書にない本書の特徴だと自負しています。

さらにコラムでは、カルテにまつわるよもやま話に加え、勉強する機会が少ないレセプトの仕組み、コロナ禍で変わった医療制度など、Updateした内容を盛り込みました。

文章としての一貫性を保つため、筆者のみで作成したため、すべての分野をカバーできていなかったり偏りがあったりするかもしれません。読者諸氏からのご批判を仰ぎたいと思います。

本書は、研修医の皆さんが“カルテの書き方で無用な苦労をすることなく、楽しい研修生活を送ってもらえたらいいな”という思いで書いた、研修医目線の「カルテの書き方」に関する本です。また、指導医の先生方にとっても、研修医指導のお役に立てていただける書籍だと考えています。

肩肘張らず、気軽な気持ちで読んでいただければ嬉しいです。

 

松山赤十字病院

牧野 英記