研修医の外来実習が必修化し、研修医も指導医も大変な世の中になった。忙しい外来を回しながら、ポイントを押さえ、研修医の思考過程をブラッシュアップしていかないといけない。さらに初診の患者さんともなれば、接遇力も試され、草葉の陰(指導医は死にそうになるけど、死んじゃダメ)……じゃなくてカーテン越し(家政婦は見た! のように真剣なまなざしで)に監督する指導医のヒヤヒヤものは、愛があったとしてもなかなかなものである。
本書は何と外来現場を再現した構成になっており、会話形式で臨場感をもって外来診療が学べ、研修医にとっても指導医にとってもありがたいアンチョコ(死語?)になっている。振り返りまで具体的に記載がある。歯が浮くような誉め言葉もなかなか参考になる(笑)。指導医講習会で学んだ執筆陣が多いことが、そこはかとなくわかる。さらに自己学習も提示して、まさに外来の荒波を乗り越える指南書だ。鑑別診断が絞り込まれて、実にいさぎが良くていい。研修医が将来どの科に進んでも獲得すべきミニマムエッセンスになっている。実にさまざまな主訴が網羅されているのみならず、COVID-19など最新情報もアップデートされている。
執筆陣の矜持が見え隠れしている素晴らしいマニュアルを、研修医にも指導医にも是非手に取ってもらいたい。
福井大学医学部附属病院救急科総合診療部長・教授
林 寛之
研修医の皆さん、一般外来研修は順調に進んでおられますでしょうか?
研修医になって、医学生とは異なる視点で、しかも医師免許をもって患者さんと接するなかで、一般外来研修はきっと難しいな……と思っている先生が多いと思います。
入院診療は患者さんが病院にずっといてくれるので、ある程度自分のペースで進めることができますが、外来はそうはいきません。外来受診の時間は患者さんの日常生活の一部ですし、受診後、お仕事にお急ぎという患者さんもたくさんおられます。つまり、外来患者さんの診療は限られた時間で手抜きをせずに、自分の考えうる最善の診療を提供しなくてはなりません。
もちろん、患者さんにとっては一般外来研修をやっている研修医も医師であることに違いはありません。そ・こ・で、この「研修医・若手医師のための外来必携」がとても役に立つことになります。おそらく、ノー勉で外来研修に臨む先生はいないでしょう!? でも、自分の想定外の主訴をもった患者さんが来ることなんてあるあるです。救急外来の研修で腹痛や胸痛はたくさん診てきたと思いますが、場を変えて一般外来にやってくる患者さんに目を向けると、体重減少であったり、浮腫であったり、はたまた不眠であったりと、およそ救急には来ない主訴のオンパレードです。
そこで本書の編者である浜田先生は、この本にエッセンシャルを込めておられます。本書の中心をなす各論では、どの症状も最初に症例が提示されていますが、症例提示の直後に研修医と指導医の対話形式でFirst impressionを記載しており、医師がどこに目線を置いたらよいかを大切にされています。そして症例の特徴から考えうるProblem listを挙げ、診断を提示し、最後には「これだけは押さえておきたい鑑別表」も示されています。なんと、その後には、これも研修医と指導医の対話形式による「症例の振り返り」コーナーがあり、読者はその症状を診るうえで大事なポイントをおさらいすることができます。
そのコーナーの後には、さらに基本的知識をレビューする「もうひと頑張りの自習部屋」まで用意されています。すなわち、この1冊をちゃんとフルに勉強すれば、外来研修のエッセンスがかなり習得できるようになっています。
外来研修をどこから始めてよいかわからないとき、本書はきっと、皆さんに気づきをもたらし、いつしか、外来研修のときは手から離れることがない本になることでしょう。
横江 正道
日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院総合内科