総合診療医が教える よくある気になるその症状

レッドフラッグサインを見逃すな!

¥2,860

●症状の特徴からレッドフラッグサイン(危険な徴候)を見極める!
         
セルフメディケーションの流れを受け、薬局や在宅医療の現場ではいま、患者の症状を正しく判断することが求められています。本書では「薬局でよく聞かれる症状」、「聞かれて困る症状」として、かぜ、痛み、消化器症状、めまい、倦怠感を取り上げ、症状の特徴やレッドフラッグサイン(重篤な疾患を疑う危険な徴候)をイチから解説。病院受診のタイミングがよくわかります。また、特によくある疾患であるかぜと胃腸炎では、クリアカットな判断基準「3症状チェック」を紹介。日々患者を診ている総合診療医だからこそ書ける現場のコツやポイントが満載です。         
         
本書のPoint
・かぜの3症状チェック(鼻、咳、喉)、胃腸炎の3症状チェック(むかむか、お腹の痛み、下痢)で、自信をもってかぜと胃腸炎を見極められる
・「OPQRST」チェックシートを使って症状を漏れなく聴き取れる
・フローチャートにより各症状の判断の流れが一目でわかる
・かぜにまつわる素朴な疑問50を掲載。患者からの質問に的確に答えられる
・主なOTC薬と速乾性手指消毒薬の成分一覧表を付録に掲載

【特別掲載】
本書をテーマに医師・薬剤師4名で行われた座談会の記事をご覧になれます(「月刊薬事」「調剤と情報」それぞれ2016年7~8月号にも掲載)。お見逃しなく! → <座談会の記事(前編)> <座談会の記事(後編)>

訂正情報

編著
岸田 直樹/著
発行日
2015年11月
判型
A5判
ページ数
304頁
商品コード
46328
ISBN
9784840746328
カテゴリ
目次

Step 1 かぜ様症状を見極める

1.かぜだと思うんです 典型的かぜ型

・患者さんがかぜと言ったら、本当にかぜなのか?

・かぜと言ってもよいときと、よくないとき。そもそも、かぜの定義とは?

・かぜって“いろいろ症状がありそう”という特徴からみえてくるかぜの臨床的な特徴

・かぜかどうか、どのように判断するか? 3つの症状に注目する!

・では,典型的かぜ型とは?

・“3症状チェック”をする際のコツ

・OTC選びのポイント

2.鼻水が出て仕方がありません 鼻症状メイン型

・3症状のなかで鼻症状が一番強い場合はどのように考える?

・膿性鼻汁は細菌性? 受診させるべき?

・鼻炎症状の鑑別疾患は何がある?

・抗菌薬投与が必要で受診勧奨すべき細菌性副鼻腔炎かどうかの判断

・一般の人でも判断可能―─2峰性の病歴に注意する

・OTC選びのポイント

3.喉が痛くてつらいです 喉症状メイン型

・3症状のうち喉症状が一番強い場合はどのように考える?

・「喉が痛い」で細菌性咽頭炎を疑うべきタイミングとは?

・A群溶連菌性咽頭炎かウイルス性咽頭炎か判断するその他のコツ

・嚥下時痛で医療機関を受診させるべきタイミング(レッドフラッグサイン)とは?

・喉が痛いのに喉に病変がない重篤な疾患を見極め、適切に受診勧奨しよう!

・OTC選びのポイント

4.咳が出てつらいです 咳症状メイン型①

・3症状のうち咳症状が一番強い場合はどのように考える?

・「肺炎かどうかは医療機関ではどのように判断しているか?」からわかる肺炎診断の限界とそのコツ

・肺炎を強く疑う病歴 その1=レッドフラッグサイン

・肺炎を強く疑う病歴 その2=レッドフラッグサイン

・OTC選びのポイント

5.熱がつらいです 局所症状不明瞭・高熱のみ型

・熱が一番つらい症状という場合はどのように考える?

・発熱のある患者さんでは悪寒戦慄の有無に注目するのを忘れない!

・局所症状不明瞭・高熱のみ型になりやすい細菌感染症とは?

・+αの症状を拾い上げるコツ

・局所症状不明瞭・高熱のみ型で、医療機関を受診させるべきタイミングとは?

・OTC選びのポイント

6.咳が止まらなくって 咳症状メイン型②(やや長引く咳)

・長引く咳をきちんと定義しよう

・感冒後咳(PIC)を知ろう

・意外に多い「PIC“+後鼻漏”」

・慢性咳嗽の原因と特徴的な病歴

・結核に敏感になろう

・OTC選びのポイント

Step 2 痛みを見極める

7.せっかくの週末なのに頭が痛くて 頭痛①

・頭痛を訴える患者さんにかぎらず、病歴聴取をする際全般のコツ

・頭痛の原因で最も多い疾患とそれに注目した病歴聴取とは?

・片頭痛かどうか? POUNDing criteriaを使う

・緊張型頭痛かどうか? どう見極めるか?

・頭痛で注目すべきOPQRST!

・OTC選びのポイント

8.頭が痛くて何だか調子が悪いの 頭痛②

・頭痛を訴える患者さんのレッドフラッグサイン

・突然発症の病歴をうまく引き出す! クモ膜下出血を見逃さないコツ

・薬物乱用頭痛も見逃してはいけない

9.腰が痛くて歩くのも大変で 腰痛

・腰痛を訴える患者さんではどのようなことを聞いたらよい?

・慢性腰痛でもいつもの腰痛との違いを見逃さない!

・腰が痛い――実は帯状疱疹

・腰痛で注目すべきOPQRST!

・OTC選びのポイント

10.膝が痛くて…何かいい薬ある? 関節痛

・関節痛を訴える患者さんではどのようなことを聞いたらよい?

・関節痛で注目すべきOPQRST!

・関節が腫れているのかいないのか?

・薬局における関節痛のレッドフラッグサインとは?

・慢性関節痛の病歴がとれてもありうる、見逃してはいけない疾患

・最も多い変形性膝関節症の基本事項と内科的治療

・関節が腫れる良性疾患――痛風・偽痛風

・OTC選びのポイント

Step 3 消化器症状を見極める

11.下痢が止まらなくって 下痢(ウイルス性胃腸炎:お腹のかぜ)

・下痢が一番つらい症状という場合はどのように考える?

・細菌性かどうかをどのように判断するか?

・胃腸炎の患者さんで最も大切なこと―─脱水の評価

・胃腸炎も3症状チェック!

・胃腸炎の3症状チェックをする際のコツ

・急性の下痢のレッドフラッグサインとは?

・OTC選びのポイント

12.何だか胃のあたりがむかむかして 吐き気

・吐き気,胃のあたりのむかむか感が一番つらい症状という場合はどのように考える?

胃腸炎で本当によいか?

・ウイルス性胃腸炎の典型的な経過からわかる胃腸炎っぽくない経過

・吐き気のレッドフラッグサイン―─患者さんに説明すべき、胃腸炎と似る重篤な疾患群

・ではどうする? 吐き気、胃のあたりがむかむかするのが一番つらい症状の場合

・OTC選びのポイント

・胃腸炎での経口水分補給はどのようにするか?

13.昼くらいからお腹が痛くて 腹痛

・最もよくある繰り返す腹痛の原因―─過敏性腸症候群

・生理痛と片づけない―─月経困難症を知ろう

・薬局における腹痛のレッドフラッグサインとは?

・腹痛で注目すべきOPQRST!

・OTC選びのポイント

Step 4 めまい・倦怠感を見極める

14.何だかふらふらして めまい

・めまいを訴える患者さんへのアプローチ―─めまいの原因は?

・めまいを分類する努力をする

・失神前めまいを見逃さない!

・薬局におけるめまいのレッドフラッグサインとは?

・めまいで注目すべきOPQRST!

・めまいを来す薬剤を使用していないかをチェックしよう!

・ヒントを引き出す病歴聴取・医療面接のコツ

・OTC選びのポイント

15.何だか最近だるくって 倦怠感

・倦怠感を訴える患者さんへのアプローチ―─倦怠感を分類する

・ヒントを引き出す病歴聴取・医療面接のコツ

・薬局における倦怠感のレッドフラッグサインとは?

・うつ病のスクリーニングができるようになろう!

・倦怠感で注目すべきOPQRST!

・薬局薬剤師さんへのお願い―─倦怠感を来す薬剤を使用していないかをチェックしよう!

・OTC選びのポイント

・代替医療,EBMとOTC薬

・代替医療への期待

付録① 主なOTC薬の成分一覧表

付録② 主な速乾性手指消毒薬の成分と特徴

知っておきたいかぜのQ&A50――かぜに関する素朴な疑問に答えられますか?

Exercise1 かぜについての基本情報

Q1 かぜの定義とは何ですか? また、かぜの症状は何ですか?

Q2 かぜに対してどのくらいの医療費が使われているのですか?

Q3 なぜ,冬にかぜをひきやすいのでしょうか?

Q4 かぜの原因となるウイルスにはどんなものがあるのですか?

Q5 ウイルスごとのかぜ症状の特徴はありますか?

Q6 同じウイルスに何度も感染するのですか?

Q7 かぜの主な感染経路は何ですか?

Q8 ウイルス排泄期間はどのくらいですか?

Q9 どのくらい症状が続くのですか?

Q10 ウイルスが“こもりやすい”時間・場所などはありますか?

Q11 かぜに関する意外と知られていない情報はありますか?

Exercise2 かぜの予防には何が効果的?

Q12 かぜ薬を予防目的で飲んでも意味がないというのは事実でしょうか?

Q13 かぜ予防に最も効果的なことは何ですか?

Q14 マスクは効果があるのでしょうか? また、どんなタイプのマスクがよいのでしょうか?

会社などでマスクをしている人も多いですが、効果はどれほどなのでしょうか?

Q15 加湿・保湿にかぜ予防の効果はありますか?

Q16 手洗いの正しい方法を教えてください。

Q17 かぜの予防にはヨード薬でうがいをするのがよいですか?

Q18 効果的な食事・栄養のとり方を教えてください。

Q19 忙しいビジネスマンなどにお勧めしたいかぜ予防対策はありますか?

Q20 かぜをひきやすい、うつりやすい人のタイプはどんな人でしょうか?

Q21 かぜをひきやすい人が気をつけることは何ですか?

Exercise3 かぜの初期症状がみられたら

Q22 かぜの潜伏期間はどのくらいなのでしょうか?

Q23 かぜ薬は症状がなくなるまで飲むべきでしょうか?

Q24 お風呂には入ってもよいのでしょうか?

Q25 かぜをうつして治すというのは本当ですか?

Q26 体温計の正しい使い方を教えてください。

Q27 市販のかぜ薬によくみられるピリン系、非ピリン系とは何ですか?

Q28 かぜ薬の種類は? 市販のかぜ薬のCMのように、喉・鼻・熱で分けられるものなのでしょうか?

Q29 かぜで病院に行ってもよいでしょうか? また,どの科にかかればよいのでしょうか?

Q30 かぜの初期症状が出た場合に、職場で気をつけるべき留意点はあるでしょうか?

Q31 その他、かぜの初期症状がみられたら気をつけなければいけないことはありますか?

また、お酒やタバコは控えるべきですか?

Exercise4 かぜがひどくなったら

Q32 かぜの重症化で起こりうる病気にはどんなものがあるのでしょうか?

Q33 かぜがひどくなるのは、人の体の中でどのようなことが起こっているからですか?

Q34 かぜだと思っていたら別の病気だったということは考えられませんか?

病院に行かなくて大丈夫でしょうか?

Q35 汗をかくと熱が下がるというのは本当でしょうか?

Q36 水枕やおでこに貼る冷却シートのようなものは解熱効果があるのでしょうか?

Q37 どうしても会社を休めない場合、どのようなことに気をつけたらよいでしょうか?

Q38 かぜとインフルエンザの違いは何ですか?

Q39 インフルエンザだった場合は、どのように療養するのが正しいのでしょうか?

Q40 看護する、またはされるときのポイントはありますか?

Exercise5 かぜの治りかけ、こじらせない方法は?

Q41 かぜをぶり返すのはなぜでしょうか?

Q42 かぜをひかないためには免疫力を高めることが大切と聞きますが、

具体的にどのようなことをすればよいのですか?

Q43 ストレスも免疫力を下げるといいますが、その対処法や、免疫力を下げる原因は他にもありますか?

Q44 ストレスに曝され、日常生活も不規則になりがちな社会人が、気軽にできる免疫力アップの方法があれば

教えてください。

Q45 かぜをひかない人に共通するような特徴や習慣はありますか?

Q46 かぜの特効薬や、かぜをひかなくなるような未来はありえるでしょうか?

Exercise6 その他の豆知識

Q47 かぜをひいたら母乳をあげてはダメですか?

Q48 おじいちゃん、おばあちゃんはかぜをひきやすいのですか?

Q49 プラズマクラスターやクレベリンなどには効果がありますか?

Q50 咳をやわらげる効果的な方法は何かないでしょうか?

書評

山本信夫先生(公益社団法人日本薬剤師会 会長)

「よくある気になるその症状」という書名と著者が総合診療医という、最近地域医療を語る際によく話題に上る診療科ということが気になってページを開いてみた。読み進むうちに、本の構成がとても新鮮に感じられた。わが国の高齢化のピークとなる2025年に向けて、世界に冠たる社会保障制度と地域医療提供体制を維持するための方策として、国は「地域包括ケアシステム」という概念を示した。そのなかで、薬剤師・薬局には医薬品の提供体制における大きな期待が社会から寄せられていて、その役割を十分に果たせるよう日本薬剤師会・都道府県薬剤師会ではさまざまな施策や事業を展開している。そうした事業のなかに、医薬分業の進展とともに比較的粗略に扱われがちであったOTC薬を活用して、セルフメディケーションを進める観点から、住民の訴える症状に的確に対応するため「薬剤師の臨床判断」に関する研修会が開催されている。

本書は一見するとその研修会で学ぶ対処法に似ているが、個別の疾患に対応した臨床判断研修とは少し趣を変えて、本書では現場で患者や地域住民と接する薬剤師ならば、必ず出くわす代表的な症状を例示し、その症状を平易に解説しながら、階段を一歩ずつ上るようにその問題の解決に導く手法である。「疾患別臨床判断」が細分化された、個々の事例への対応を目的としているとすれば、本書の手法は代表的な事例をあげて対処や解決の方法を示し、それらを相談された相手によって自在に変化させる応用力を養うに打ってつけの書籍であろう。かなり長い間、調剤に偏重した業務が進んできたと指摘される開局薬局にあって、かかりつけ薬剤師・薬局を目指して医薬品の一元的な供給と管理を確かなものとするうえで、OTC薬を活用したセルフメディケーションへの積極的な関わりは、地域包括ケアシステムにおける薬剤師・薬局の基本的な業務と考えられている。地域住民の医薬品に関するよろず相談場所として、また、適切な判断の下でOTC薬の効果的な使用の確保ならびにそれらを使う患者や地域住民の安全な医薬品使用を確保するうえで、いつも薬剤師の傍らに置いておきたい書籍の一つである。

 

平井みどり先生(神戸大学医学部附属病院薬剤部 部長・教授)

岸田先生、ますますパワーアップ!

この本は、「目の前の困っている人にどう対応すれば、みんなが幸せになれるのか」についての「ちょっとした」ヒントがわかりやすく説明されている本です。あくまで「ちょっとした」と受け止めましょう。岸田先生のお話は重みがない、という意味ではありません。しっかりとした医学の知識と実践の上に成り立っているけれども、それを大上段に振りかざすのではない岸田先生の姿勢を理解しましょう。そして読後、薬剤師があくまで「さりげなく」、「ちょっとした」ヒントやアドバイスをお渡しする、どうするかの決定は患者さんあるいは来局者にお任せしますよ、でも不測の事態が起こったときは、ちゃんとしかるべきところにつなぎますからね、というための本です。

日常的に最も遭遇する機会が多い「風邪」についてページが割かれ、いわゆる臨床推論から危険な兆候=レッドフラッグサイン、対応手順のフローチャート、よく聞かれる患者さんからの質問、OTCの選び方のポイントまで記載されているのは、親切というほかありません。風邪に次いで多い頭痛や腰痛について「OPQRST」というツールを使い、全身疾患との関連性や医療機関受診のタイミングをいかに逃さないかという視点は、患者さんを守るだけでなく、薬剤師自身を守ることにもなります。薬剤師が対応できる・すべき場合に「すぐ先生のところに行ってください!」と言わないためにもオススメの1冊です。

 

北田光一先生(前 一般社団法人日本病院薬剤師会 会長)

高齢化の進展により、これからの医療は、「病院完結型」から、地域全体で治し支える「地域完結型」に変わらざるをえないことから、地域包括ケアシステムの構築が進められている。そのなかで、薬局は地域密着の健康情報の拠点として、一般用医薬品などの適正使用に関する助言や健康情報に関する相談を提供するファーストアクセスの場として、セルフメデイケーションの推進のために機能することが期待されている。

本書は、主に保険薬局やドラッグストアの薬剤師を対象として、かぜ、痛み、消化器症状、めまい、倦怠感といった現場で遭遇しやすい症状を取り上げ、症状をどのように見極め、どのような対応をとるかについて解説したものである。セルフメデイケーションをサポートするうえで重要なことは、医薬品使用に関する助言や健康相談に関する情報提供に加えて、患者がよく訴えてくる症状のなかに隠れている重篤な疾患のサインを見逃すことなく、医療機関を受診するタイミングを適切に提示できるかどうかである。

本書では、患者が訴えてくる症状について、患者との臨場感のある対話形式のなかで症状の訴えから得られる重要なヒントを捉える視点や重要な情報を得るための質問の投げかけ方のポイントなどがわかりやすく解説されている。それぞれの症状ごとに用意されている「OPQRSTチェックシート」は、患者の症状を効率よく漏れなく聞くための参考にしてもらいたい。また、受診勧奨が望ましい危険な兆候を見逃さないためのアプローチの図は、各症状の判断の流れが一目でわかるよう工夫されており、質の高い薬学的管理の実践にはありがたいフローチャートである。

本書は、薬局の店頭だけではなく在宅医療の現場において活動する薬剤師に常に傍らに置き活用いただきたい書籍である。地域におけるファーストアクセスとしての機能を確立するための第一歩となることを期待している。