とことんわかる病態のクリニカルロジック
訂正情報
第1章 腹痛編
1 腹痛のタイプによって病態を見分ける
2 痛みの病歴聴取とOPQRSTの質を高める
3 危ない腹痛を見極める、誰でもできる腹痛フィジカル
第2章 頭痛編
4 危ない頭痛の共通点と聴き出し方を学ぶ
5 病態生理から見抜くよくある頭痛の特徴
第3章 意識障害編
6 明日からできる意識障害はじめの10秒
7 ワンランク上のAIUEOTIPS使いこなし術
補講 迅速に対応すべき疾患の代表格『敗血症』
第4章 浮腫編
8 むくみの基本と病態生理をトコトン学ぶ
9 Commonな原因による浮腫を病態生理から見抜く
第5章 胸痛編
10 絶対見逃したくない胸痛のOPQRST
11 心電図正常のACSを見抜くための胸痛レッスン
第6章 初心に戻って考える編
12 関節痛ってホントに悪ですか?
13 腹痛ってホントに悪ですか?
第7章 めまい編
14 眼振所見が教えてくれる耳石のキモチ
15 最も多いめまいBPPVの“病態生理”がまるわかり!
16 絶対に帰してはいけないめまい
第8章 関節痛編
17 診断に結びつく病歴聴取の秘訣は“炎症”と“P”にあり
18 免疫システムから迫る関節痛の鑑別、病歴の違い
19 結晶性関節炎と感染症による関節痛の特徴をつかむ
第9章 発熱編
20 不明熱は本当に不明? 発熱+αを探すようにしよう!
21 敗血症とSIRSの病態から学ぶ発熱+αの探し方
22 不明熱+αの症状が出やすい病態とそうでない病態の捉え方
23 病原体の特徴から迫る不明熱になりやすい感染症
第10章 心不全編
24 病態生理から心不全を定義する
25 体液量のモニター係、腎臓の病態から心不全を定義する
初期研修医1年目、ともに研修に励む仲間たちが「将来何科に進むべきか?」と、近い将来の進路に迷い毎日のように議論を交わしていた研修医ロッカー室で、私は日々「自分はどんな医者になりたいか?」を模索していた。行く先々でローテート科の人間関係にも恵まれ、医学的にはどの診療科も魅力的に感じていた私にとって、“進むべき診療科”の選択は二の次だった。
15年後の現在に至っても、気づけば「自分はどんな医者になりたいか? 今日はどんな医者だったか? 明日はどんな医者になりたいか?」、そんなことを自分自身に問いかけ続け、日々の診療と臨床教育を続けている。
(中略)
本書は、2016年から3年近くにわたり、じほうの月刊誌に連載させていただいた内容をもとに構成されている。そして、それはもともと私が卒後3年目に上司と立ち上げた院内研修医向け勉強会「レジスタ症候学」で行ってきた講義を中心に、日々のベッドサイド教育回診、講演会での話、そこで繰り広げられたディスカッションの内容をまとめたものである。
臨床教育は真に自分自身に向けられる教育でもある。臨床的疑問を見つけ、調べ、考え、臨床的な価値を見出し、実践し、検証し、それを教える。教えることではじめて知識は定着し、新たな疑問が芽吹き出す。私は15年間、臨床教育を一つのツールとして自分自身の智を深めてきた。そして、本書の“智”は、私が「どんな医者になりたいのか」と思い悩んだ日々をともに歩んできた“智”であり、教育コンテンツということになる。
アカデミックな内容から、時に患者さんとの間で繰り広げられる心理戦、生命の意味論に至るまで、本書が実用的な臨床医学の指南書となり、若手医療従事者が「何科に進むべきか」を考える前に自分が「どんな医療者になりたいか」を“考える”きっかけになる教科書であってほしいという願いを込めてまとめた。
(中略)
本書では特に重要な生理学、解剖学、免疫学の3軸に重きを置き、さまざまな症候における身体の神秘ともいえる構造やメカニズムについて多くの紙面を割いている。
簡易的なマニュアル本があふれる臨床医学の世界。思うようにいかないケース、なかなか診断がつかないケース、つまづくケース……、マニュアルどおりにいかないケースはいくらでもある。そんなとき、“正常なヒトの身体から病態生理をひも解く力”こそが私たちの思考の引き出しを開いてくれると信じている。
マニュアル本は読んでも忘れる。基礎医学に立ち返る深い学びにより、ヒトの身体の神秘に触れ、小さく感動することで、その知識と思考ははじめて臨床医のなかに深く根付き、真の記憶となり武器となる。
昭和大学リウマチ膠原病内科
高橋 良
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