研修医・総合診療医のための
第0章 押さえておきたい用語
1 RECIST(固形腫瘍の治療効果判定)
2 PS(performance status)
3 CTCAE(副作用評価)
第1章 総論
1 告知
2 疼痛薬物療法
3 主要臓器障害時の抗がん薬治療
4 腫瘍循環器学
5 腫瘍糖尿病学
6 化学放射線療法
7 緩和的放射線治療
8 がん治療に使うデバイス
第2章 各年代のがん治療
1 AYA世代への対応
2 小児がんサバイバーと移行期医療
3 高齢者への対応
第3章 副作用・有害事象
◆全身性
1 発熱性好中球減少症と敗血症
2 重症アナフィラキシー
3 電解質異常
4 腫瘍崩壊症候群
5 免疫関連有害事象(irAE)
6 骨髄抑制と輸血
7 ホットフラッシュ
8 アルコール不耐症とタキサン系薬剤
◆消化器系
9 悪心・嘔吐
10 下痢
11 便秘
12 口腔粘膜炎
13 B型肝炎ウイルス再活性化
◆循環器系
14 血栓塞栓症
15 心不全
16 高血圧
◆呼吸器系
17 薬剤性肺障害
◆腎
18 腎障害
19 尿所見異常
◆皮膚障害
20 血管外漏出
21 脱毛,爪障害(アピアランスケア)
22 薬剤性皮膚障害
◆精神系
23 せん妄
◆神経系
24 末梢神経障害
第4章 がん進行への対応
◆全身性
1 発熱
2 骨折予防薬の使い方
◆消化器系
3 腹水
◆循環器系
4 上大静脈症候群
5 がん性心囊水/心膜炎/心タンポナーデ
◆呼吸器系
6 がん性リンパ管症
7 がん性胸水
◆精神系
8 抑うつ
◆神経系
9 転移性脳腫瘍
10 がん性髄膜炎
11 脊髄圧迫
第5章 がん終末期
1 がん進行期の在宅医療
2 がん患者とDNAR
3 抗がん薬のやめどき
4 終末期の対応
第6章 チームアプローチ
1 化学療法前の口腔管理
2 栄養指導/栄養管理
3 薬剤師からみたがん治療
4 看護師からみたがん治療
第7章 知っておきたい検査/制度/研究
1 遺伝子検査
2 標準医療と臨床研究
3 陽子線治療/重粒子線治療
4 光免疫療法
5 CAR-T細胞療法
6 がん相談支援センター
7 医療費に関わる制度/仕組み
コラム
•重複がん治療のピットフォール
•医師が目を向けるべき抗がん薬の曝露対策とリスクマネジメント
•ガイドラインの限界
•外来化学療法の増加
•がん治療中に有用な漢方薬——パクリタキセルの末梢神経障害に対する牛車腎気丸
•COVID-19パンデミック後の継続可能な社会・医療
◆監修にあたって
長らくがんの診療や教育に携わってきたなかで,ファーストタッチシリーズから,がん化学療法の成書が出版されたことは,大変に感慨深いものであります。
私が横浜市立大学附属病院化学療法センター長に就任した2008~2014年度の間は,わが国で多くの分子標的薬が承認・社会実装され,外来化学療法加算の診療報酬改定や,院内では電子カルテへのレジメンシステムの導入など,大きな動きがありました。化学療法センター長に着任後,教科書の情報は古すぎるため,診療科を超えた最新の化学療法に関する情報を集めたことを思い出しております。また実際に外来化学療法を運営するなかで,特に在任中にがん化学療法の安全管理の問題点の多さに気づき,さまざまな対策を行ってまいりました。その間に痛感したことが,レジメンシステムの未熟性もあり,患者さんに安心かつ快適な化学療法を提供するには,多職種連携によるリスク管理が最重要であるということでした。医師・看護師・薬剤師の連携だけではなく,安全管理部門,事務部門,さらに電子カルテのベンダーとのコミュニケーションも極めて重要な連携でありました。試行錯誤の日々のなか,横浜市立大学附属病院と横浜市立大学附属市民総合医療センターの化学療法における安全管理のノウハウを全国に発信したいという意図で編集したのが,今回のファーストタッチのコンセプトにも取り込んでいただいた,2013年9月発刊の「がん化学療法クリティカルポイント対応マニュアル」(株式会社じほう)でした。この書籍は,がん化学療法におけるチーム医療の重要性とともに,万が一,抗がん薬の副作用や有害事象により患者さんが重症となった際にすぐに活用できる“クリティカルポイント”をわれわれの経験から抽出し,コンパクトにまとめたもので,当時の化学療法の安全管理に役立つものであったとの自負があります。
時代が10年進み,本書では細心のエビデンスに基づいた,がん化学療法とその副作用の予防,発生時の対応などが網羅され,がん診療に携わるすべての年代の医師に読んでいただきたい内容となっています。特に,がん化学療法に携わるベテランの関係者の皆さまにとっては,分子標的薬や免疫療法の発展の歴史にも思いを馳せることができる,読み応えのある出来栄えであると思います。
本書の出版にあたり,監修と編集長の労をとられ,熱いパッションとともに,がんの診療・教育に取り組んでいる堀田医師,長年のがん診療のパートナーである太田薬剤師と畑副看護部長,分担執筆者の皆さま,株式会社じほうの皆さまに改めて深謝いたします。
横浜市立大学副学長
同 産婦人科学教室主任教授
宮城 悦子
◆編集にあたって
大学病院に所属していると医学生や若手医師の教育に携わることが多い。教育を通じてこちらが教わることも多く,若者からの刺激をいただける。しかし,医学生・若手医師の臨床教育における根本的な問題として,効率の悪さがあった。例えば,臨床実習では医学生が4人程度のグループで週替わりに回ってきて,1時間程度のレクチャーをする。これは横浜市立大学だけでなく日本中のどこでもみられる光景だろう。1時間をかけても,たったの4人にしか知識や経験を伝えることができない。
2023年初夏,横浜市立大学附属病院化学療法センターの大先輩である宮城先生から,若手医師向けのがん化学療法のマニュアル本作成の打診があり,即座に快諾した。書籍を書いて何千人,何万人の若手医師に読んでもらえれば,きっとわが国のがん診療の底上げにつながるだろう。株式会社じほうを交えた打ち合わせは,初回から盛り上がった。こだわりのキーワードは「類書との差別化」である。分担執筆形式の医学書は多数出版されているが,読み比べてみると似たような書籍が多い。分担執筆者は,医学書に間違いを記載してはいけないというプレッシャーと同時に,あまり時間をかけられないという現実的な問題もある。結果として,分担執筆者の最適解は,各種ガイドラインや先行類似文献のコピー&ペーストとなる。似たような書籍が多いのは当然だろう。本書の分担執筆者への依頼状では「専門医から後輩へのアドバイスの感覚で,現場ならではのtips,間違えやすい点,エビデンスが不足している場合の専門医の対応,直近10年で変更のある点,複数のガイドラインの記載が異なる場合の考え方,ガイドラインや成書の批判的吟味などを記載してください」とお願いした。このような書籍はあまりないだろう。そもそもファーストタッチシリーズは,「全編なるべく箇条書き」という斬新なシステムを採用しており,先行文献のコピー&ペーストができず,分担執筆者は自分の言葉で執筆せざるを得ない。さらに,類書にとりあげられていない最近のトピックや,現場での悩みを項目別に具体的にとりあげて執筆者にお願いした。現状のエビデンスからは正解がなく,執筆者が悩んでいる姿がにじみ出ている項目も多数ある。それこそが医療の現実である。
本書は生と死を扱った優れた文学作品のようなものであり,読者の臨床経験に応じて心に響く箇所が異なるだろう。下線を引いてじっくり読み解き,5年後,10年後に読み返していただきたい。
本書の作成にあたり,監修の宮城先生,編集の太田先生ならびに畑副看護部長,分担執筆者の皆さま,株式会社じほうの吉岡さまと齊藤さまに大変お世話になった。多くの仲間に支えられつつ本書を発刊でき,これ以上の幸せはない。
横浜市立大学附属病院
化学療法センター長
堀田 信之
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