研修医・総合診療医のための

精神科ファーストタッチ

¥3,740

コンパクトだけど精神科の悩みを解決できる1冊!
●向精神薬の選び方・心のケアのポイントがシンプルにわかる!
●「スタンダードな治療のながれは?」「向精神薬のリスクと限界は?」「副作用?それとも増悪?」一度でも悩んだことのある人必読!
 
精神疾患への向き合い方に悩んでいませんか? せん妄や抑うつ,不眠症状は,精神科医でなくてもよく見る症状ですが,その診断や治療は一筋縄ではいかないもの。特に数値・画像でとらえづらいところに,つい,苦手意識をもってしまう人も多いのではないでしょうか。
そこで本書では,精神症状を一度でも診たことがある人なら知っておきたい精神科のエッセンスをコンパクトに解説。重要なポイントに絞ってあるから,モヤっとした瞬間にスッキリ解決できます。さらに,よく使われる向精神薬の適応症や適用外使用がサッと確認できる一覧表付き! コンパクトながら,疾患・薬・副作用を網羅的にカバーした万能な1冊です。

 

編著
鈴木 映二、仙波 純一/監・著
山田 和男/著
発行日
2023年11月
判型
B6変型判
ページ数
248頁
商品コード
55474
ISBN
9784840755474
カテゴリ
目次

 第1章 総論

1 精神科治療法の基本

 

第2章 疾患編

2 せん妄

3 認知症二

4 不眠障害

5 身体症状症(慢性疼痛など)

6 神経発達症(ASD・ADHD)

7 うつ病

8 双極症

9 統合失調症

10 パニック症

11 強迫症

12 神経性やせ症

13 ステロイド精神病(CIPDs)

14 アルコール・物質使用症

15 ボーダーラインパーソナリティ症

 

第3章 薬剤編

16 抗精神病薬

17 抗不安薬・睡眠薬

18 抗うつ薬

19 気分安定薬(双極症治療薬)

20 抗認知症薬

 

第4章 副作用編

21 精神科薬物療法における副作用

◆精神神経系の副作用

22 悪性症候群

23 錐体外路症状

24 セロトニン症候群

25 リチウム中毒

26 アクチベーション症候群

27 離脱症候群・中断症候群・奇異反応

28 興奮

29 薬剤性不眠

30 性機能不全・高プロラクチン血症

31 水中毒

◆身体的な副作用

32 血液学的異常

33 静脈血栓塞栓症

34 QT延長症候群

35 消化器症状(便秘・イレウス・下痢)

36 誤嚥性肺炎

37 体重増加・糖尿病

38 排尿障害

39 重症薬疹

 

第5章 その他

40 コンサルテーション・リエゾン精神医学

41 緩和ケア

42 高齢者

43 女性

44 周産期

45 自殺

46 社会資源・相談支援・社会活動支援

序文

読者の皆さんへ

 

全体を大きく捉えることができると,診断や診療の視野が広がり,今後の治療への方向性が定めやすくなります。本書の前半はそのために主要な精神疾患をあげておきました。あえて細部にこだわりすぎず,診断や治療の流れを簡潔に記載したつもりです。著者どうしで読み合わせをして,記述に個人的な意見の偏りがないようにもしました。良い意味で標準的な記述となっているはずです。

精神科での診療は個室で患者と医師との間だけで終わってしまい,他の科のように他の医師やスタッフからのチェックがなされないまま進行しがちです。精神科診療は密室化していると批判されるゆえんでしょう。そのなかで独断的な治療にしないためには,標準的な治療を知っていなければなりません。そのうえで自分なりの治療を開始することになります。もちろんその際には患者さんやその家族の希望を取り入れる必要があるでしょう。

本書の後半は精神科の薬物療法における副作用の説明や対処法について扱っています。精神科で使用する薬物の副作用には,はっきりした身体症状もありますが,一方で精神症状そのものとの鑑別が難しいものもあります。副作用かな? と思ったり,見慣れない身体症状を患者さんが訴えたりしたときには,この本にもう一度当たってください。薬物療法の有効性だけでなく,そのリスクや限界も知ったうえで薬物療法を開始してください。

ところで精神科治療は薬物療法だけでは済みません。本書では具体的に言及することは少なかったですが,精神療法の重要性についても著者たちは注意して記述したつもりです。本書を白衣のポケットに入れていつも活用していただければ幸いです。

 

仙波 純一

 

 

 

◆序

 

本書は,3人の臨床家が,大学病院および総合病院,精神科単科病院,精神科救急などの現場で得てきた知識や技術,医学部生や研修医の臨床指導および治療ガイドラインの翻訳・作成さらには学会活動や厚生労働省の委託業務などの経験を,研修医などにフィードバックしたいと考えて共同で執筆しました。

内容は,基本的には日本および欧米の最新のガイドラインに沿っていますが,古典的なものも取り入れました。一方で,ガイドラインの手が届かないエビデンスの少ないところなどは,その分野の専門家による書籍および筆者らの経験も加えて作成しました。

読者の皆さんへのメッセージとして,精神科診療において一般的に(ここでは詳細は避けるもののさまざまな意味合いで)最も効率的なのは薬物療法ですが,精神科薬物療法はリスクが高いということを忘れないでください。例えば,診療報酬でハイリスク薬に指定された薬のうち,約3分の1が精神科治療薬です。筆者自身,悪性症候群や重症薬疹などの副作用で患者さんにご迷惑をおかけした痛い経験は多数あります。また,本書が示す治療方針は,あくまでも一般的なものです。患者さん一人ひとりで治療の希望は違いますし,薬物の感受性が大きく異なることも忘れないでほしいです。そして,それぞれが身を置く医療現場に沿った現実的な治療を心がけ,チームワークを重要視すること,しかし慣習などに流されないことのバランスを大切にしてほしいと思います。

ヒポクラテスの言葉を借りれば,経験は嘘をつく,知識は時代とともに変わっていく,しかし,一度身につけた技術は決して裏切ることはありません。本書が皆さんの技術習得に少しでもお役に立てるのであれば,筆者一同,大変しあわせです。

 

鈴木 映二