よくある疑問にエキスパートが答える
訂正情報
第1章 まずはおさらい! 高齢者診療の基礎知識
・高齢者の生理機能と薬物動態
・高齢者総合機能評価(CGA)
・高齢者に対する安全な薬物治療
・ポリファーマシー
・高齢者におけるがん治療
・在宅医療
・フレイル、サルコペニア
・End of Life Care
第2章 治療の“迷いドコロ”をひも解く! 4つの視点とQ&A
▶︎循環器疾患
高血圧
急性冠症候群
心房細動
心不全
▶︎消化器疾患
消化性潰瘍(胃食道逆流症を含む)
便秘
▶︎呼吸器疾患
気管支喘息
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
▶︎内分泌・代謝疾患
2 型糖尿病
脂質異常症
▶︎神経疾患
パーキンソン病
脳卒中
▶︎腎・泌尿器疾患
慢性腎不全
前立腺肥大症
過活動膀胱
▶︎骨・関節疾患
骨粗鬆症
関節リウマチ
▶︎皮膚疾患
褥瘡
▶︎眼疾患
緑内障
▶︎感染症
市中肺炎
尿路感染症(腎盂腎炎・膀胱炎)
▶︎精神疾患
認知症
不眠症
せん妄
楽木 宏実先生(大阪大学大学院医学系研究科老年・総合内科学 教授/日本老年医学会 前理事長)
『高齢者診療Standard Collection 32』の「32」は、基礎知識「8」個+高齢者でよく遭遇する疾患「24」個である。「8」と「24」、それぞれに臨床医が最も知りたい項目を選択されている。
「8」個の基礎知識には、以前から老年医学分野で強調してきた項目のほか、最近の老年医学の進歩に伴い急速に知見が増え、臨床面で重要性が増している、ポリファーマシー、フレイル、サルコペニア、エンドオブライフケア、在宅医療といったキーワードが並んでいる。1人の医師がすべての場面に対応することが困難になりつつある医療現場において、医療者間、多職種間でいかに連携すべきか、連携の際の基礎知識といえる内容である。
「24」個の疾患も、いわゆる高齢者のcommon diseaseだけでなく、内科系以外の褥瘡や緑内障にまで及び、さまざまな形で高齢者診療に関わっておられる実地医家の先生にとって、“かゆい所にまで手が届く”企画となっている。高齢者診療は特定の医師(専門医)が関わる診療ではない。さまざまな専門医が併診することだけでは解決できない問題も多い。急性疾患やがんを集中して治療するような場面を除いては、司令塔となって1人の高齢者を診る医師が個人の診療において重要な役割を果たす。いわゆるかかりつけ医であるが、個々のかかりつけ医は若いときに必ずしも老年医学を専門に学ばれていないが、本書があれば、個々の専門性を活かしつつ、目の前の患者に最新の老年医学を適用するのに大きな助けとなる。日常の疑問にガイドラインを熟知した執筆陣が解説しており、内容も簡潔かつ具体的である。
高齢者診療に関わる1人でも多くの医師が本書を手に取り一読されるとともに、日々の診療の場の手元に置いていただき、ハンドブックのように活用していただくことをお勧めする。
渡邉 裕司先生(浜松医科大学 副学長・理事/臨床薬理学講座 教授)
日本が未曽有の高齢化社会に突入していることはご存じのとおりです。内閣府の発表では、全人口に占める65歳以上人口の割合が2025年に30%に達するとされています。医療機関への受診者に占める高齢者の割合はさらに顕著で、多くの診療科の受診者の半数以上は高齢者とされています。このように、受診者のマジョリティである高齢者へ適切な診療を実践することは極めて重要であり、そのためには、高齢者の生理的特性を理解し、また、薬物を投与する際の注意点を把握することが求められます。
本書の執筆には高齢者医療のエキスパートが加わり、臨床薬理学の第一人者である藤村氏が編集を、老年医学の第一人者である大内氏が監修を担当されました。編集や構成にさまざまな工夫が凝らされ、高齢者診療における重要部分が徹底的に解説されています。まず、第1章で高齢者診療において習得すべき基本的事項をおさらいした後に、第2章では日常診療でしばしば遭遇する24の疾患や症状への診療アプローチが取り上げられています。第2章の各項目の冒頭には参考となる文献情報の入手先が示され、Part.1ではガイドラインに沿った基本的な治療方針が解説されています。当然のことですが、日常で私たちが診療する高齢者は1人ひとりがさまざまな合併症を抱え、また多くの薬が併用されており、だからこそ各人に適した治療が求められます。そのような個別化治療の根拠となる情報が、続くPart.2やPart.3でQ & Aの形をとり紹介されています。
高齢者を対象に、診療の根拠をガイドライン、エビデンス、薬物動態・臨床薬理学などの視点で深堀解説した本書は、高齢者診療の質を高めるための大きな助けとなるでしょう。本書が高齢者診療に携わる多くの先生方に活用されることを願っています。
林 昌洋先生(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 薬剤部 部長)
チーム医療に参加されている病院薬剤師の皆さん、在宅医療を支える薬局勤務薬剤師の皆さん、高齢患者特有の名医の処方ストラテジーを知りたいと思った経験はありませんか?
皆さんの期待に応えてくれる書籍が、2020年2月に出版されました。臨床薬理学の第一人者である自治医科大学名誉教授の藤本昭夫先生が編集、老年医学の第一人者である虎の門病院院長の大内尉義先生が監修された『高齢者診療 Standard Collection 32』です。
総論「まずはおさらい! 高齢者診療の基礎知識」では、高齢者の生理機能と薬物動態、高齢者総合評価(CGA)、ポリファーマシー、フレイル・サルコペニアなどの8項目について、要点絞りわかりやすく解説されています。チーム医療に参加する薬剤師にとって、専門職共通の基礎知識を学ぶ参考書として極めて有用な内容となっています。
各論「治療の迷い“ドコロ”をひも解く! 4つの視点とQ&A」では、循環器・消化器・呼吸器・神経・腎など11領域にわたり24のCommon Diseaseについて、信頼できるガイドラインを引用し「基本的な治療方針」が解説されています。
これに続く「はじめに押える! 高齢者診療の勘所」はQ&A形式で“Guideline”、“Evidence”、“Clinical Pharmacology”、“Others”の4視点から、エキスパートの医師による踏み込んだ解説がまとめられています。
例えば、脂質異常症の章では「後期高齢者の一次予防の方針は?」のQuestionに対して、「75歳以上のエビデンスは全世界的に示されていないが、最近、日本からEWTOPIA75研究が報告され、後期高齢者でもハイリスク患者の一次予防ではコレステロール低下療法が有効であることが証明された」と最新のエビデンスをもとにAnswerがまとめられています。
また、心房細動の章では「何歳まで抗凝固薬を使用するか?」のQuestionに対して、「90歳でも外見が若く元気に生活している患者では、投与が勧められるが、70歳でもADLが著しく低下し自力服薬困難例では、積極的には使用しない。(一部抜粋)」とのAnswerがまとめられています。まさに、エビデンスに基づいた“名医の勘所”といえる内容に納得です。
疑義照会や服薬指導、処方提案の場面で薬学的考察をする前提として、名医の治療戦略を知ることは大切です。薬剤師が高齢者の薬物療法のベネフィット・リスク最適化に取り組むとき、必携の書籍となることでしょう。ぜひ、手に取ってご一読ください。
近年、非常に多くの薬物が臨床の場で用いられるようになり、処方の際に戸惑いを覚える医師も多いと思います。さらに、高齢者の増加とともに多剤併用療法が一般化したため、単純にガイドラインに準じた診療を行っただけでは十分対応できない場合もあります。しかし、薬物を適正に使用するためには、高齢患者の複雑な病態に応じて薬物を使い分ける必要性のあることは言うまでもなく、現在、高齢者薬物療法を先導するような情報源が求められています。
このような社会のニーズに応じて、医師が適切な高齢者薬物療法を実践するための必要な知識を習得するのみならず、老年医学に関する基本事項も学ぶことを目的として本書を企画しました。本書は総論と各論からなり、総論では高齢者診療における基礎を理解するために必要な薬物動態学などの8項目を取り上げました。さらに各論では、日常診療でしばしば遭遇する疾患・症状を24項目取り上げ、それぞれについて、①診療を行う際に参考となる情報の入手先、②標準的な治療方針、③高齢者薬物療法において基本的であるが、医師の間で認識が不足していると思われる事項、④高齢患者の背景や合併症の治療の際、迷うことが多い事項についてまとめました。なお、③および④は、すぐに臨床で使えるようにQ&A形式にしています。
後期高齢者におけるエビデンスは少なく、診察にあたる医師の知識や経験によって薬物療法の質が左右されている現状がありますが、本書が臨床の場で活用され、高齢者薬物療法の質の向上に役立てば望外の喜びです。
国家公務員共済組合連合会虎の門病院 院長
大内 尉義
自治医科大学 名誉教授/巨樹の会 学術顧問
藤村 昭夫
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