医師ともっと話せるようになるための

基本的臨床医学知識

¥3,960

●できる薬剤師は知っている 医師との共通言語
●基本的臨床医学知識を習得することで医師との会話が飛躍的にアップ!

従来、薬剤師は薬物療法について医師とは異なる立場で共有しており、また近年では感染症やがんの領域に代表されるように薬剤師の専門性が高まりつつあります。

しかしながら、薬剤師がその専門知識を十分に活かして医師とディスカッションするためには、医師との共通言語となる基本的な臨床医学知識が必要になります。この基本的な臨床医学知識の土台の上にさまざまな専門知識がなければ、せっかくの薬剤師特有の知識も十分に医師に伝わずとても残念な結果になってしまう可能性があります。

本書では、薬剤師に必要な基本的臨床医学知識を解説するとともに、十分な教育環境の整っていない医療機関でもどのようにすればさらなる知識の習得を進めていけるかといったヒントも記載しています。

 

編著
大八木 秀和/監
杉田 直哉、山田 雅也/編
発行日
2017年4月
判型
B5判
ページ数
388頁
商品コード
49664
ISBN
9784840749664
カテゴリ
目次

基本的臨床医学知識をマスターすれば医師と同じ土俵で話ができる


軸足は薬学に置いて学ぶ基本的臨床医学知識


カラーアトラス


プロローグ できる薬剤師になる12のヒント


序章 基本の“キ”バイタルサイン


第1章 医師と話すための病態生理のキホン

1.循環器のしくみを理解する―大動脈弁狭窄症の病態から

2.腹腔内のしくみを理解する―胆嚢炎の病態から

3.呼吸器のしくみを理解する―COPDを合併した肺炎の病態から

4.内分泌のしくみを理解する―甲状腺機能亢進症の病態から

5.膠原病を理解する―不明熱の病態から

6.腎臓のしくみを理解する―結石による腎盂腎炎の病態から

7.脳のしくみを理解する―統合失調症の病態から

8.脳神経のしくみを理解する―患者の自覚症状から

9.血液のしくみを理解する―播種性血管内凝固症候群の病態から

10.妊娠のしくみを理解する―周産期の患者から

11.小児の解剖生理を理解する―心室中隔欠損の病態から

12.救急・集中治療を理解する―敗血症の病態から

13.栄養療法の流れを理解する―嚥下障害の病態から


第2章 専門医が教える知っておきたい疾患と治療のキホン

1.心房細動―心電図の見かたとくすりの使い方

2.動脈管開存症―NSAIDs投与で知っておくべき解剖生理

3.胃がん―胃の手術法と胃切除後障害へのくすりの使い方

4.直腸がん―消化管手術とストーマ(人工肛門)合併症へのくすりの使い方

5.肝臓がん―肝臓の基本的知識と治療法

6.肺がん―手術と周術期のくすりの使い方

7.肺がん―合併症とくすりの使い方

8.C型慢性肝炎―検査値の読み方とくすりの使い方

9.バセドウ病―甲状腺中毒症の分類とくすりの使い方

10.関節リウマチ―活動性の評価とくすりの使い方

11.慢性腎臓病(CKD)―腎機能の評価とくすりの使い方

12.末期腎不全―透析開始のタイミングとくすりの使い方

13.過活動膀胱―膀胱の生理機能とくすりの使い方

14.前立腺肥大症―くすりの使い方と抗コリン薬の注意点

15.せん妄―見分け方と対処方法

16.脳梗塞―脳動脈の解剖と血栓溶解薬の使い方

17.くも膜下出血―外科的治療とくすりの使い方

18.神経障害性疼痛―神経の痛みへのくすりの使い方

19.痙縮―生活機能障害と治療のポイント

20.鉄欠乏性貧血―貧血の知識と鉄剤の使い方

21.子宮内膜症―妊娠希望の有無とくすりの使い方

22.多嚢胞性卵巣症候群―妊娠希望の有無とくすりの使い方

23.溶連菌感染症―くすりの使い方と服薬指導のポイント

24.マイコプラズマ肺炎―診断のポイントとくすりの使い方

25.外傷初期診療―出血性ショック観察のポイントと見逃してはいけない薬剤有害事象

26.摂食・嚥下障害―メカニズムと服薬の注意点

書評

川添 哲嗣先生(医療法人つくし会 南国病院 薬剤部)

本書は薬剤師である杉田直哉氏、山田雅也氏の両名が執筆とメインの編集担当となり、多くの経験豊富な薬剤師と医師により共同執筆されている。監修は元薬剤師で現在は医師としてご活躍の大八木秀和氏である。大八木氏は巻頭言で本書についてこう述べられている。「高い理想を持つ薬剤師が将来医師と対等に議論を交わし、医師からいろいろな相談を受け、お互い頼り頼られる存在になるためのメッセージ」。これを目的として大きく2つの章に分けて疾患別に解説されている。

 前半は「薬剤師が医師と話すための病態生理のキホン」である。循環器や呼吸器などのテーマ別にCase Studyが進んでいく。まず病棟での医師と研修医の会話がなされるのだが、薬剤師は毎ケースその会話についていけず困っている設定から始まる。読者はこの会話を読むと、脳の中が「新たな知識を得たくて仕方ない状態」になってしまうものだから、その先の内容には勝手にぐいぐいと引き込まれていく。そして最後にその疾患を理解するために執筆者がお勧めする本が数冊紹介されている。さらに学びたい方は、その本を買えば良いわけだ。

後半は「専門医が教える、知っておきたい疾患と治療のキホン」である。こちらでは薬剤師に知っておいてほしい基本事項や疾患のポイント知識そして薬の使い方を医師の執筆陣が語ってくれている。図解も多く、わかりやすく学んでいける。さて皆さんはカンファレンスに出席し、飛び交う専門用語に一切付いていけず悔しい思いをしたことはないだろうか。本書で医学知識の不足を補った後、いま一度カンファレンスに出席してもらいたい。きっと内容についていけるようになっているに違いない。そう確信させてくれるオススメの一冊である。

 

平井みどり先生(神戸大学名誉教授)

薬剤師はミニ医師であってはいけないし、そうなる必要もない。とはいえ、医学知識は無視して薬のことだけに特化するのは問題だ。現在の薬物治療は膨大な知識と経験の上に構築されているわけで、それらすべてをマスターするのは不可能な関係上、他職種との連携は必須である。そのためには、共通言語・共通認識がないと意思疎通がうまくいかない。多職種連携やチーム医療は行われてはいるが、その質をもっと高めるために薬剤師が知っておくべき臨床知識すなわち初期研修医が身につけているレベルの医学的知識を学習するためのテキストとして作成されたのが本書である。監修者の大八木氏は薬剤師・医師であり、臨床医として薬剤師の強みと弱みを熟知している立場から、薬剤師が今よりももっと活躍することで、医療の質が向上することを訴え続けている。薬剤師が活躍する場は、都会の高度先進医療の現場だけでなく、地方の中小病院にむしろそのチャンスが多い、と大八木氏が述べているのは慧眼である。執筆陣は、実臨床で医師と連携して活躍している薬剤師および各疾患の専門医である。薬学に軸足を置いた病態の理解について薬剤師が解説、症例に基づいて各疾患の特徴や検査・治療への理解と薬の使い方を専門医が解説している。膨大な疾患とその治療について、覚えるのではなくどう理解するかが理論的に述べられており、監修者得意の対話形式や「羊先生」のワンポイントアドバイスが随所に挿入されているので大変読みやすい。薬剤師は「診断」するのではなく「理解する」ものだと改めて納得させられる。これまで類書を読んでいま一つ納得できなかった方も、本書を読み終えて「腹落ち」することが多いと実感されるだろう。