月刊薬事 2023年7月増刊号(Vol.65 No.10)
いまさら聞けない・いますぐ知りたい「疑問」に答える
Part 1 殺細胞性抗がん薬、分子標的治療薬の副作用と支持療法
【消化器系】
1 悪心・嘔吐 / 林 稔展
Q1 シスプラチンを含むレジメンでもステロイド・スペアリングを行うことは可能でしょうか?
Q2 突出性悪心・嘔吐に対する制吐薬として、オランザピンを使用することはできますか?
2 下 痢 / 森岡 友美
Q3 下痢を起こしやすい抗がん薬を投与する場合、止痢薬の予防投与を検討すべきでしょうか?
3 便 秘 / 森岡 友美
Q4 便秘と下痢のコントロールがなかなかうまくいきません。何かコツがありますか?
Q5 オピオイドを増量したいのですが、便秘のコントロールが困難で患者の同意が得らません。どのように対応すればよいでしょうか?
4 口腔粘膜炎 / 石川 寛
Q6 口腔粘膜炎予防としてポビドンヨード製剤の含嗽剤を使用してよいでしょうか?
Q7 抗がん薬の口腔粘膜炎にステロイド口腔用軟膏を使用してよいでしょうか?
5 口内乾燥 / 石川 寛
Q8 うがいは多くしたほうがよいでしょうか?
Q9 口唇の乾燥で亀裂ができてしまった場合、リップクリームや白色ワセリンを塗ればよいですか?
6 B型肝炎ウイルス再活性化 / 中川 潤一
Q10 免疫チェックポイント阻害薬によるがん治療を行う患者に対しても『免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン』に基づくHBV再活性化予防策を講じるべきですか?
Q11 核酸アナログ製剤の投与にあたり、注意すべきことを教えてください。
7 肝障害(薬物性肝障害) / 中川 潤一
Q12 肝障害の判断のためにどのような血液検査値のモニタリングを行う必要がありますか?
Q13 一般的な治療(被疑薬中止や肝庇護薬投与)を行っても肝障害が遷延した場合にはどのような治療がありますか?
【循環器系】
8 心毒性 / 藤堂 真紀
Q14 がん薬物療法施行中に心血管イベントを発症した場合、がん薬物療法を継続してもよいでしょうか?
9 血栓塞栓症 / 藤堂 真紀
Q15 がん薬物療法に伴う静脈血栓塞栓症(VTE)の診療に有用なバイオマーカーはありますか?
10 高血圧 / 藤堂 真紀
Q16 血管新生阻害薬投与中の患者の血圧管理は必要ですか?
【腎・泌尿器系】
11 腎障害 / 高田 慎也
Q17 シスプラチンなどの抗がん薬によるAKIの早期診断として血清Cr値以外にどのような検査値がありますか?
Q18 Calvert式に使用するGFR値をCCr値で代用することがありますが、血清Cr値に0.2の補正をする際の注意点として、何かありますか?
Q19 免疫チェックポイント阻害薬使用時のAKI発症危険因子として何が報告されていますか?
12 蛋白尿 / 高田 慎也
Q20 血管新生阻害薬投与による蛋白尿増悪の危険因子には何がありますか?
13 血 尿 / 高田 慎也
Q21 化学療法中、尿の着色で出血性膀胱炎以外に注意することはありますか?
【内分泌・代謝系】
14 腫瘍崩壊症候群 / 土手 賢史
Q22 ラスブリカーゼ再投与時の有効性と安全性を教えてください。
Q23 大量輸液投与時は心不全に注意、とのことですが、具体的に何をモニタリングすればよいですか?
15 糖代謝異常・糖尿病 / 土手 賢史
Q24 ステロイド・スペアリングの具体的な方法と注意点を教えてください。
16 電解質異常 / 土手 賢史
Q25 デノスマブによる低Ca血症のリスクが高い患者や、腎障害患者に対するデノスマブの投与方法を教えてください。
Q26 免疫関連有害事象の副腎不全は、どんなときに疑えばよいでしょうか?
【呼吸器系】
17 間質性肺疾患(薬剤性肺障害) / 中垣 繁
Q27 がん治療患者に対して、抗がん薬以外にも薬剤性間質性肺炎に注意すべき薬はありますか?
Q28 免疫チェックポイント阻害薬の投与歴のある患者は、間質性肺炎の発症リスクは上昇しますか?
Q29 薬剤性肺炎を発症した抗がん薬の再投与は可能ですか?
【骨髄抑制】
18 好中球減少、白血球減少 / 髙橋 悠
Q30 発熱のない好中球減少に対して、抗菌薬の予防投与は必要でしょうか?
Q31 がん化学療法によるFNの発症抑制において、PEG化G-CSF製剤と非PEG化G-CSF製剤の効果に差はありますか?
19 赤血球減少、貧血 / 髙橋 悠
Q32 胃がんの術後の患者で貧血症状を呈した場合、抗がん薬以外にどのような原因が考えられますか?
Q33 経口鉄剤を投与中の患者に悪心が現れた場合、どのように対処したらよいでしょうか?
【皮膚障害】
20 発疹、皮膚乾燥、?痒症、ざ瘡様皮疹・ざ瘡、爪囲炎 / 佐藤 淳也
Q34 軟膏を塗る量の目安、至適量はありますか?
Q35 保湿剤は、入浴後に塗るべきでしょうか? ステロイド外用剤と塗る順序はありますか?
Q36 ステロイドを開始するタイミングや使用するステロイドのランクに注意はありますか?
21 手足症候群 / 佐藤 淳也
Q37 保湿剤の選択について教えてください。
Q38 手足症候群は、休薬で治りますか? どれくらい治癒にかかりますか?
22 色素沈着 / 佐藤 淳也
Q39 免疫チェックポイント阻害薬による白斑が生じる患者の特徴はありますか?
23 脱 毛 / 佐藤 淳也
Q40 化学療法や放射線治療中の髪染めやパーマの基準は、ありますか?
24 血管外漏出 / 佐藤 淳也
Q41 漏出後のステロイド投与は、外用剤の塗布と局所注射のどちらがよいでしょうか?
Q42 漏出局所のケアは、冷罨法と温罨法のどちらがよいでしょうか?
Q43 漏出を未然に防ぐための投与方法の工夫はありますか?
【精神・神経系】
25 末梢神経障害 / 今井 哲司
Q44 抗がん薬による末梢神経障害の症状緩和において、プレガバリンやミロガバリンの使用は有効でしょうか?
Q45 抗がん薬による末梢神経障害の症状緩和において、NSAIDsやオピオイド鎮痛薬の使用は有効でしょうか?
26 意識障害・せん妄 / 今井 哲司
Q46 抗がん薬誘発せん妄への抗精神病薬の治療有用性について、明確に言及されている報告は存在しますか?
また、抗精神病薬の使用でも症状の改善が望めない場合には、どのような対策を講じればよいでしょうか?
【全身症状】
27 倦怠感 / 村上 通康
Q47 倦怠感が出現しやすい抗がん薬は何ですか?
Q48 免疫チェックポイント阻害薬投与時に倦怠感が出現した場合は何を疑いますか?
Q49 倦怠感の改善にステロイドは有効ですか?
28 筋肉痛、関節痛 / 村上 通康
Q50 タキサン系による筋肉痛・関節痛の発現を予防する方法はありますか?
Q51 アロマターゼ阻害薬の関節痛で治療が継続できない場合はどうしますか?
Q52 抗がん薬以外で筋肉痛・関節痛の原因となるものは何がありますか?
29 過敏反応 (アレルギー反応、インフュージョンリアクション) / 村上 通康
Q53 過敏反応が発現した場合に再投与は可能ですか?
Q54 カルボプラチン脱感作療法はどのようにしますか?
Q55 アルコール過敏症の患者への対応はどうしますか?
Part 2 ホルモン療法薬の副作用と支持療法
【乳がん治療薬による副作用】
1 ホットフラッシュ(更年期障害様症状) / 宮本 康敬
Q56 ホルモン療法を実施している乳がん患者にホルモン補充療法を行ってもよいでしょうか?
Q57 タモキシフェン投与患者に気を付ける薬物相互作用はありますか?
2 生殖器症状 / 宮本 康敬
Q58 子宮体がん検診を勧めたほうがよいでしょうか?
3 骨・関節症状 / 宮本 康敬
Q59 なぜ、アロマターゼ阻害薬と選択的エストロゲン受容体調整薬(SERM)との併用を避ける必要があるのですか?
4 精神・神経症状 / 宮本 康敬
Q60 マインドフルネスとは何ですか?
【前立腺がん治療薬による副作用】
5 ホットフラッシュ / 池末 裕明
Q61 LH-RHアゴニストとアンタゴニストの作用機序はどう違いますか?
Q62 LH-RHアゴニストとアンタゴニストでは、ホットフラッシュの発現にも違いがありますか?
Q63 ホルモン療法に薬剤師が関わる意義として、どのような有用性が考えられますか?
6 性欲減退・勃起障害(ED) / 池末 裕明
Q64 EDやうつ症状のためホルモン療法を継続困難な場合は、どう対応しますか?
7 女性化乳房 / 池末 裕明
Q65 前立腺がんの治療中に、女性化乳房の被疑薬として注意すべき薬にはどのようなものがありますか?
8 肝障害 / 池末 裕明
Q66 アビラテロンによる肝障害のため他剤に切り替える場合、どのような点に注意すべきですか?
Part 3 免疫チェックポイント阻害薬の副作用と支持療法
1 免疫チェックポイント阻害薬、免疫関連有害事象とは / 吉野 真樹
2 irAEの大腸炎、重度の下痢 / 小林 一男
Q67 ICIsによる腸炎のリスク因子はありますか?
Q68 ICIsによる大腸炎において、ベドリズマブとインフリキシマブの使い分けについて教えてください。
Q69 下痢が発現した場合、何に注意すればよいでしょうか? 特に、下痢の鑑別で、知っておくべき①下痢の原因、②薬剤性下痢の原因薬剤、③感染性腸炎の特徴──などを教えてください。
3 irAE腎障害 / 吉野 真樹
Q70 腎機能低下症例や透析症例にICIsは投与できますか?
4 irAE間質性肺疾患 / 吉野 真樹
Q71 間質性肺疾患合併症例にICIsは使用できますか?
Q72 irAE間質性肺疾患が発症した後にICIsの再開はできますか?
5 irAE1型糖尿病 / 田内 淳子
Q73 2型糖尿病の既往がある患者でも1型糖尿病を発症することがありますか? 発症した場合、見分け方や注意点はありますか?
Q74 1型糖尿病を発症した患者にはどのような支援が必要でしょうか?
6 irAE内分泌障害(甲状腺機能障害、副腎機能障害、下垂体機能障害) / 吉野 真樹
Q75 自己免疫疾患合併症例にICIsは使用できますか? Q75 自己免疫疾患合併症例にICIsは使用できますか?
7 irAE肝障害 / 小林 一男
Q76 irAEに使用しているステロイドの漸減方法で注意すべき点について教えてください。
Q77 irAEに使用するミコフェノール酸 モフェチルは効果が出るのにどれくらい待ったほうがよいでしょうか? また、副作用はどのように気をつけていけばよいでしょうか?
Q78 irAE肝障害の鑑別方法を教えてください。
8 irAE神経障害 / 奥田 泰考
Q79 ステロイドパルス療法の薬剤選択と用量設定はどうしたらよいですか?
Q80 ステロイド療法で症状改善が得られないときの対応はどうしたらよいですか?
9 irAEの重症筋無力症、筋炎 / 南 晴奈、廣田 豪
Q81 irAE MGにおいて他のirAEと異なる点はありますか?
Q82 MGで血清CKは上昇しますか?
Q83 MGと筋炎の症状の相違点は?
10 irAE心筋炎 / 南 晴奈、廣田 豪
Q84 ICIsによる心筋障害発症時、その治療としてステロイド療法は有用ですか?
Q85 ステロイドが不応であった場合、次の免疫抑制薬は何が有用ですか?
11 皮膚irAE / 奥田 泰考
Q86 SJSやTENの初期症状にはどのようなものがありますか?
Q87 ステロイドの使い分けはどのようにしますか?
Part 4 CAR-T療法の副作用と支持療法
1 CAR-T療法とは / 山際 岳朗
2 サイトカイン放出症候群 / 山際 岳朗
Q88 CRSは投与からどのくらいの期間で発現しますか?
Q89 CRSの重症度は何に基づいて判定されていますか?
Q90 CRSに対してトシリズマブ、ステロイドを使用した場合、CAR-T療法の効果に影響はないのですか?
3 神経障害 / 山際 岳朗
Q91 神経障害は投与からどのくらいの期間で発現しますか?
Q92 神経症状に関連して、患者に指導するべきことは何ですか?
Part 5 治療継続をサポートするうえで知っておきたい その他のキーワード
1 手術・放射線治療への対応 / 東 加奈子
2 栄養療法(悪液質を含む) / 石原 正志
3 AYA世代のがん治療 / 日置 三紀
4 高齢者のがん治療 / 藤田 行代志
5 併存疾患のある患者のがん薬物療法 / 野田 哲史
6 がん患者・家族が利用できる各種支援制度・相談窓口 / 三宅 知宏
がん細胞の増殖・浸潤に関わる分子理解が進むにつれ、がんを治療するための医薬品なども爆発的に増えてきました。すなわち、1990年代までは、アルキル化薬などの殺細胞性抗がん薬やホルモン療法薬が主力でしたが、2000年代に入ると分子標的治療薬の開発が一気に加速しました。さらに、免疫チェックポイント阻害薬(2014年)、CAR-T細胞療法薬(2019年)、がん遺伝子パネル検査(2019年)が保険診療で実施できるようになり、治療の選択肢は現在でも広がり続けています。あわせて、各種ガイドラインも整備され、5大がんから原発不明がんまで、またAYA世代から高齢者までなど、ありとあらゆるシーン・患者さんに対してがん治療の標準化が進みました。
これらの膨大な成果は、がん患者さんに生存延長という恩恵を与え、現在では、がんとどのように共存していくのかということが大きなテーマになっています。このようななか、患者さんの日常生活を困難にしているものの一つが、抗がん薬による副作用であり、病態進行に伴う倦怠感や食欲不振であります。この領域では、がん専門薬剤師などが患者さんのQOL向上に大きく貢献していますが、アップデートされた支持療法の情報を体系的に学習することは、専門性の高い薬剤師だけでなく、これからがん専門薬剤師などを目指す薬剤師にとっても必須といってもよいでしょう。
そこで、本増刊号では、主に業務でがんに関わっているが、まだ経験の浅い薬剤師を対象に、『抗がん薬の支持療法』をテーマに組みました。まず、各種抗がん薬・CAR-T療法の副作用に関して、臓器別に病態・症状を挙げたうえで、その支持療法に対するポイントを解説しています。さらに、世代別の治療として、AYA世代と高齢者のがん治療を取り上げるとともに、治療継続をサポートするうえで必須となる、手術・放射線療法への対応、栄養療法、併存疾患のあるがん治療などの話題もピックアップしました。
本書を、医師への処方提案や患者さんへの指導などに活用することによって、患者さんの副作用に関する悩みの解決に役立つことができれば、企画者としてこのうえない喜びであります。
2023年7月
京都大学医学部附属病院 教授・薬剤部長
寺田 智祐
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