訂正情報
子どもの注意欠如・多動症(ADHD)の診断・治療ガイドライン
第 1 章 ADHDとはどのような疾患か
1 ADHD 概念の形成史について
2 子どもの発達とADHD
3 ADHD の疾病構造
4 ADHD 特性の脳科学的理解
5 ADHD とASD の併存をめぐる脳科学的理解
第 2 章 ADHDの診断・評価
1 ADHD の診断・評価法
2 ADHD の評価に用いる各種評価尺度
3 医学的・心理学的検査
4 ADHD の早期発見
5 鑑別診断
6 併存症
7 ADHD をめぐる注目すべき課題
第 3 章 ADHDの治療・支援
1 心理社会的治療
2 薬物療法
第 4 章 子どものADHDの中長期経過および成人期のADHD
1 ADHDの中長期経過
2 成人期のADHD
3 成人期に初めて診断されるADHD
第 5 章 第4 版から第5版へのガイドラインの改訂をめぐる検討
1 第5版ガイドラインへの改訂をめぐる検討―執筆者アンケートを通じてー
付録:資料
Ⅰ 診断・評価編
1 ADHD の診断基準(DSM-5)
2 ASD の診断基準(DSM-5)
3 ADHD の診断基準(ICD-10)
4 子どものADHD臨床面接フォーム
5 反抗挑戦性評価尺度(ODBI)
6 行動特徴のチェックリスト
7 子どもの日常生活チェックリスト(QCD)
Ⅱ 治療・支援編
1 ADHDとはなんでしょう(親用パンフレット)
2 ADHDのことをもっと知ろう(子ども用パンフレット)
3 ADHDの子どもを支え育むために(親用パンフレット)
4 ADHDの薬物療法について(親用パンフレット)
5 ADHDの子どもの担任の先生へ(教職員用パンフレット)
索引
古久保 拓(仁真会 白鷺病院薬剤科)
彼は山に登っているのだと思う。
その途上での体験、感情、そしてかき分けて出会ったサイエンスをノートに投影し、荒地に少しずつ道を作ってきた。彼は中腹に差し掛かり、麓を一望できる稜線から、歩み始める多くの人たちに、迷っている私に、勇気を与えているのだ。
歩みを言葉にして。
それは決して精神論などではなく、投影された理論と哲学に裏打ちされた確固とした道標である。それぞれに降りかかる苦難や過ちでさえ、学びのきっかけや成長の糧となることをさりげなく伝え、新たな道の開拓の意義を教え、時には初心を蘇らせてくれる。
彼はまだ中腹ですらないことに気づくかもしれない。稜線には下りもある。ただその行程に意味があり、道標は簡単に崩壊するものではない。選ばれた言葉と歩みを支えた信念は深く尊いのだから。
一方で世の中の乱雑に溢れる言葉を拾い、解釈を積み重ねてきた彼もまた、先駆者の影響を多大に受けているともいえる。そんな彼が、好感度の上がりそうな写真の帯とともに私たちに新たなテーゼを提供してくれた。すべての医療者に体験してほしい一冊。サイエンスと哲学で描かれた道標の体験にココロが震える。
羨ましいのは彼の祝辞を直接聞いた新人たち(Short Essay 3参照)。自らを蘇らせるコトバが何よりも登り続ける一足になり、やがて財産になる。彼の言葉から、薬学の、薬剤師の、社会における確固としたアイデンティティを感じてほしい。
たとえ先が見えなくても私は登るのだ。彼もまた、登り続けるのだと確信する。技能と忍耐力をもって。そんな勇気も与えてくれる良書である。
より良い医療とは、医学・薬学だけでなく、教育学、文学、心理学、行動経済学、そして哲学によって補完されると思う。読んでよかった。面白いよね、薬学って! 実践するって!
大野 能之(東京大学医学部附属病院薬剤部)
「その薬歴に患者はいますか」「その服薬指導に薬学はありますか」――本書の表紙カバーに記載されたメッセージである。薬剤師として患者のために仕事をするという当たり前のこと、それができているかどうかを振り返ることが重要だが、そのことをシンプルに、そして強烈に問いかけている。
僕は、薬剤師のアイデンティティに拘っている。薬剤師であれば、やっぱり薬学を武器にしなくてはいけない。必要なのは、“なんちゃって薬学”ではなく、学問としての“真の薬学”である。もちろん、医学的知識やコミュニケーション学といった薬学以外の学問も勉強しなくてはならない。でも、薬学が武器でなければ薬剤師ではない。そして、薬学者ではなく、薬剤師だから医療従事者として患者のために仕事をするのだ。
本書を読めば、薬剤師が患者のために薬学を活かす大事な職種であることを改めて感じ、そして「自分もこのような仕事をしなくては」と思えるはずだ。今まで誰も教えてくれなかったとしても、本書は“決して易しくはない薬学”を優しく教えてくれる。学術的な内容だけに留まらず、症例ベースの記述に患者のリアルが感じられ、所々に作家や詩人など著名人の言葉が、またShort Essayには著者の哲学が紹介されている。これらのメッセージは、薬学だけではなく、プロとして患者と向き合う際のヒントになるだろう。
最後に一言、著者の山本先生に。本書のなかで僕やPISCSも紹介いただき、ありがとうございました。お互いこれからも頑張りましょう。薬学を患者に活かすために。
川添 哲嗣(徳島文理大学香川薬学部)
「これは参考書なのか」「いや、ショートショート小説ではないか」と錯覚してしまうほど面白い。星新一の小説を読んだときの感覚に近く、読み始めから引き込まれ、息をすることも忘れるくらい集中して読破してしまった。いつも思うことだが、著者の山本雄一郎氏の文章力はすごい。
もちろん、引き込まれる理由は文章力だけではない。圧倒的な薬学の知識に加え、薬歴記載に必要な情報や思考・ロジックが凝縮された実用書でもあるからだろう。「患者が変わっても、薬が同じならば服薬指導や薬歴の内容はあまり違わない」――もし、そう感じたことが一度でもあるなら、早期に改善するために、ためらうことなく本書を購入したほうがよい。本書に掲載されている症例をもとにした解説を読み、ぜひ参考にしながら実践してみてほしい。判で押したような代わり映えのない服薬指導と薬歴はきっと改善される。あなたの服薬指導は薬学に満ちたものになり、あなたの書く薬歴には患者さんがしっかり登場することになる。ついには、患者さんの病状の改善や安定、悪化防止に繋がる。薬剤師として、そこを目指してほしい。
実は、本書にはもう一つお得な要素がある。「良い薬歴、良い服薬指導をするために、どう準備するのか、どう勉強するのか、どう後進を育成するのか、そういったことにも積極的に触れてみました」(本書冒頭の「はじめに」参照)。つまり、後進を育てる指導的立場の薬剤師にとって必要な情報や考え方までもが書かれている。新人からベテランまで、ショートショート小説のような感覚で読み進められ、内容を実践すれば患者さんの利益や後進の育成にも繋がる。一粒で二度美味しい、お菓子のような本書の活用を心より推薦する。
石井 伊都子(千葉大学医学部附属病院薬剤部)
確かに誰も教えてくれなかった。特に、旧4年制課程を卒業して薬剤師になった者は、在学中に薬理学を勉強しても、「薬物治療とは何ぞや」などと授業でしっかり教わった記憶などない。6年制になって実務実習が22週間確保されてからは、腎・肝機能低下時の対応や薬物相互作用など、多少は触れる機会に恵まれた。しかし、実際に患者からどのような情報を得て、患者の何を評価して次に繋げるのかという一連の思考過程はon the job trainingを続けてこそ身につくものである。
私は、薬局薬学のエディターと自称される山本雄一郎先生の思考プロセスを本書で垣間見た気がする。ご本人は「ロジックは後づけ」と記されているが、患者にその都度真摯に対峙したからこそ生まれた項目が並び、また患者との関係が継続的であることが読み取れる。まさしく本書は山本先生のポートフォリオである。さらに、間に挟まれているShort Essay 1~3がいい。お人柄が滲み出ている。これを読んだだけでも幸せな気分になることができた。
薬学管理を教わった人もそうでない人も、薬局薬剤師はもとより病院薬剤師もまずは本書を手にとってほしい。少なからず、ご自身の経験と重なる部分があると思う。実際の薬物治療は、添付文書やガイドライン、マニュアルの複合体であるうえに、患者個々の状態まで考慮しなくてはならない。本当に処方された薬物治療がその患者に最適なのかを考えるのは、薬剤師の役割である。誰でも最初からできるわけではない。興味のあるところから読めばいいし、行ったり来たりも悪くない。繰り返し広げてほしい本である。
児島 悠史(株式会社sing/Fizz-DI)
薬剤師は「薬」の専門家なので、どうしても薬に意識が向きがちです。これはもちろん、薬を多面的に分析・評価できるという薬剤師の“強み”なのですが、同時に、その薬を使う「患者さん」という存在を置き去りにして考えてしまいがちな“弱み”にもなります。この弱みを克服するには、ただ机の上で勉強するだけでなく、得た知識を実臨床でたくさん活用していろいろな経験を積む必要があります。しかし、一人の人間がどれだけ頑張っても、積める経験の量には限界があります。そのため自己研鑽には、“他人の経験”も吸収し、自分の血肉にしていくという視点が重要になります。
この書籍では、薬剤師が添付文書や診療ガイドラインといったツールから得た薬に関する情報を、どのように活用すれば患者さんの人生に貢献できるのか、その具体的なヒントが「薬学」という切り口からたくさん紹介されています。服薬指導、薬歴、トレーシングレポート、処方提案、服薬後フォローアップ、症例検討会などさまざまな場面で薬剤師として何を考え、どのような戦略を組み立てればよいのかを丁寧に教えてくれるその姿勢は、さながら職場でいつも隣に居て、ちょっと困ったときにいろいろな経験を共有してくれる“良き先輩”のような存在といえます。
私たち薬剤師には、薬を通して患者さんをみるという「薬学」によって、世の中を良くしていく力があります。ただ知識をつけるだけでは身につきにくいその力を、鍛えて、発揮して、そして次に繋いでいく方法を掴む――多くの薬剤師にとって、そんな大事な1冊になると思います。
お久しぶりです、“薬局薬学のエディター”こと山本雄一郎です。2017年3月に『薬局で使える実践薬学』(日経BP社)、2018年9月に『誰も教えてくれなかった実践薬歴』(じほう)を世に放って4年の月日が流れてしまいました。
薬学は面白いと感じてほしかった『薬局で使える実践薬学』では、「考え方がわかるのでよい」という声が少なからずあり、それを受けて薬歴の考え方を記した『誰も教えてくれなかった実践薬歴』の反響は、「これは薬歴の本であって薬歴の本ではない」「勉強の仕方をもっと知りたい」「薬学管理の実践的な例をもっとみたい」といったものでした。
“人は他人の経験を知りたがっている”
――松本清張:実感的人生論.中公文庫、p19、2004
ということで、薬局薬学のエディターとしての作品、第3弾は『誰も教えてくれなかった実践薬学管理』です。
じつは、今のロジックは後づけなんです。講演や執筆などで扱った話題、運任せに手近なテーマを取り上げた記事、そういった断片を集めて一冊の本にまとめています。どう配置するか、それが薬局薬学のエディターとしての腕の見せどころでしたが、添付文書や重篤副作用疾患別対応マニュアル、ガイドライン、薬剤情報提供書、そして患者指導箋といったモノを基準に章立てをしてみました。案の定、「大事なことがあっちとこっちで繋がっている」といった場面もありますが、ご容赦ください。ただ、良い点もありました。テーマを決めてかかると、どうしてもこぼれ落ちてしまう大事なこと、そういったものをたくさん詰め込むことができたのです。新しい視点もたくさん見つかりました。
また、薬歴の記入例も全症例に織り込みました。良い薬歴は大抵、良い服薬指導の結果にすぎませんし、良い服薬指導をするためには、そのための準備が不可欠です。ということで、どう準備するのか、どう勉強するのか、どう後進を育成するのか、そういったことにも積極的に触れてみました。なんせ薬局薬学のエディターとしての最後の作品ですから。(後略)
2022年8月 山本 雄一郎
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