病態の理解がトレーシングレポート・フォローにつながる
プロローグ 薬局薬剤師としての思考過程を磨くために
Case1~20 病態の理解から服薬指導までしっかり解説
1.セファランチンが1日30mg? 常用量の5倍以上!
2.精神科・小児科で出たナゾの漢方処方の意図は?
3.小児の発熱にアスピリンが900mg/分3,しかも1日分!?
4.歯科からラフチジン……胃酸症状での処方!?
5.皮膚科からステロイドが処方。受診理由はぶどう膜炎!?
6.カプトプリル50mg 1日分だけ処方……血圧のコントロール?
7.非結核性抗酸菌症の薬はいつまで服用する?
8.アンケートに「多系統萎縮症」の記載。処方は抗パーキンソン病薬でいいの?
9.大腸がん治療薬,薬局でできる副作用対策は?
10.タムスロシンを服用中の患者――PSAの値が高いといわれて紹介されたけど……
11.二分脊椎って!? 病態と治療のポイントをつかもう
12.神経内科からユビデカレノン錠の処方……ミトコンドリア脳筋症って?
13.サルコイドーシスの患者……心臓ペースメーカーは関係ある?
14.ステロイドが減量されシクロスポリン追加……強皮症ってどんな病態?
15.ドボベットが処方……乾癬患者への生活指導のポイントは?
16.42歳女性に循環器用薬がたくさん……ベントール術とは?
17.メトホルミンが一時中止に……その理由は?
18.統合失調症患者にレボドパ製剤……処方理由は?
19.褥瘡に関わる第一歩! 処方例から理解を深めよう
20.拡張型心筋症ってどんな病気? どこに注意したらいい?
Case21~24 トレーシングレポート実践編
21.トレーシングレポートの作成 はじめの一歩
22.トレーシングレポート編① フスコデを一包化する必要性は?
23.トレーシングレポート編② 酸化マグネシウムはなぜ原末処方?
24.トレーシングレポート編③ 口渇の理由は高Ca血症?
私は、北海道札幌市に本社を置く株式会社サンクール あしたば薬局グループに所属する、ごく一般的な調剤薬局勤務の薬剤師です。2019年5月に「処方箋の“なぜ”を病態から推論する」を出版させていただき、今回はその続編となります。前作にも自己紹介を記載させていただきましたが、今回初めて読んでいただく方もいらっしゃると思いますので、簡単に自己紹介いたします。また前作同様、共著である医師・岸田直樹先生のお力添えがあり、本書を出版させていただいています。
北海道医療大学薬学部4年、大学院2年を修了した後、神経内科単科の病院に6年勤務し、その後、現グループ薬局に移りました。数年の経験後、大学病院前に新規出店する調剤薬局の管理者を任されましたが、多くの疾患や病態を理解できていなかった私は、初回問診票に記載された疾患名や、処方内容、処方意図などに関しても知識のなさを痛感しました。
そこで、当時一緒に働いていた同僚の薬剤師たちとともに、受けた処方箋の薬や疾患について調べてまとめ、互いに勉強しあうことにしました。また、それを医薬品情報(DI)の社内情報紙として毎月グループ全店に配信することで、「忙しいから作れなかった」という逃げ道を断ちました。当然、業務中には作業を完結できないので、プライベートの時間も平日はできるだけ社内DI情報紙の作成に充てるようにしました。続けるのがつらいときもありましたが、以前はわからなかった症例が少しずつでも理解できるようになっている自分を実感でき、継続することの必要性を感じました。
本書はこの社内DI情報紙をベースに構成されています。各ケースの表題は、薬剤師が処方箋を受けた際に思い浮かべる最初の“疑問”となっています。そして処方箋の内容と、患者さんから聞き取りした内容や問診票・アンケートの情報から一つの答えを導き、実際に私が感じた感想やその後の関わり方を述べています。この部分だけでも各ケースの概要を把握していただけると思いますが、“疑問”を解決するためにもっと情報を掘り下げ、処方された薬や疾患について順を追って解説した後、調剤薬局での患者対応の一例を会話形式で記載し、最後に岸田先生からコメントをいただいています。これは医師の視点や考えに触れることのできる貴重な機会と思います。また、必要に応じて「One More Lecture」として応用的な解説も加えています。
本書で解説しているケースは大学病院前の調剤薬局で受けた処方箋がメインとなっていて、多くの薬局で遭遇する症例ではないかもしれません。ですが、これからの薬剤師のあり方を考えた際に、より臨床的な知識を増やし、どのような疑問をもち、どのように解決していくか? という思考過程が非常に重要であり、これはただ参考書を読むだけでは身につきにくく、他者の思考過程を知ることで得られるものだと思います。本書ではその思考過程を順序立てて解説しました。
また近年、薬という「モノ」を渡すだけではなく、渡した後のフォロー、治療効果の評価、フィードバックなどをすることで、薬剤師は治療への積極的な参加が求められています。このフィードバックにはトレーシングレポート(TR)が有用とされていますが、私を含め、薬剤師としての思考過程や意見を文書として提出することに大きな壁を感じている方も多いのではないでしょうか? まだまだ未熟ですが、本書ではCase21以降でトレーシングレポートを提出した症例も紹介しています。また、トレーシングレポートを書く際の工夫も提案させていただいています。
自分自身の“薬剤師力”アップのために、あるいは新人教育のツールや症例検討会の材料として、研修担当の方にも役立てていただける一冊ではないかと考えています。また、トレーシングレポート症例に関しては、少しでも作成のハードルが低くなったと感じてもらえる薬剤師が増えれば良いなと考えながら執筆しました。一人でも多くの患者さんから「薬剤師がいてよかった」と言ってもらえる、そのために本書が少しでもお役に立てれば幸いです。
株式会社サンクール あしたば薬局グループ
宇高 伸宜
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