薬剤師のための

ゼロからわかる救急・急変対応

¥4,070

●救急・急変患者の病状を適切に評価できるようになる!
●症状・病態に応じて適切な治療薬を提案できるようになる!
●中毒を含め、薬剤起因性の救急・急変病態を疑うことができるようになる!
 
「救急なんて自分に関係ない」「患者が急変したら医師を呼べばいい」「救急で薬剤師に対応できることは中毒だけ」と思っている人にこそピッタリの書籍です。本書を読めば、救急の知識はどの病院の薬剤師にも必須で、病棟の急変患者に薬剤師ができることはたくさんあり、あらゆる疾患・病態に薬の知識が使えることがよくわかります。
道なき道を歩んできた救急外来の薬剤師グループが贈る、Evidence-basedな知識と実践から導き出された現場のコツがわかる1冊です!
編著
徳洲会救急薬剤師研究会/編
発行日
2023年7月
判型
A5判
ページ数
280頁
商品コード
55214
ISBN
9784840755214
カテゴリ
目次

1章 緊急入院患者への薬剤師的アプローチ

 1.病棟でのアプローチ① 一般病棟 

 2.病棟でのアプローチ② 集中治療室 

 3.救急・ERにおけるアプローチ① 

 4.救急・ERにおけるアプローチ② 北米型 ER・二次救急病院

 

2章 バイタル・検査値からの薬剤師的アプローチ

 1.バイタルからできること、ERで頻用する評価ツール

 2.肝・腎・電解質異常からできること

 3.凝固系・血球系異常からできること

 

3章 薬剤師も知っておかなければならないBLS・ACLS

 

4章 主訴別/エリア別/レベル別 あるあるケーススタディ

1 意識障害患者へのアプローチ

 1.意識障害の原因は? あいうえおチップス? 

 2.脳を救え! Time is Brainシチュエーション!

 3.原因はあの薬剤かも? 原因薬剤検索シチュエーション! コリン作動性クリーゼの場合

 

2 発熱患者へのアプローチ

 1.この抗菌薬、使ってください! 薬剤師におすすめの抗菌薬提案

 2.白濁尿が出てきた !? 患者へのベストプラクティス

 

3 急性中毒 /薬剤起因性疾患へのアプローチ

 1.意外にある「先生、この患者さん、これ飲んでたんですけど…」①

 2.意外にある「先生、この患者さん、これ飲んでたんですけど…」②

 3.キノコ、山菜、自然毒!

 4.知っててよかった! 困ったときの検索方法

 5.中毒対応を一気におさらい!

 

4 外傷・刺咬傷患者へのアプローチ

 1.実は知らない!? ヘビ咬傷

 2.びっくり海洋生物!? クラゲ、ヒトデ!

 3.骨折治療だけじゃない! 高齢者外傷患者への関わり方!

 

5 痛みへのアプローチ

 1.この頭痛、ホントに痛み止めでOK?

 2.この胸の痛みは、恋か? 心筋梗塞か? 大動脈解離か?

 3.歩けないほど痛い! 転倒後の腰痛患者への OPQRSTアプローチ!

 4.わかっちゃいるけどやめられない! 大人の腹痛!

 

5章 緊急病態の薬物療法ミニマムエッセンス~疾患・状態別病態生理と薬の選び方・使い方~

 1.アナフィラキシーショック

 2.肺塞栓

 3.脳梗塞

 4.急性冠症候群

 5.敗血症

 6.失神、意識障害

 

6章 ER・救急のリアルな実際を知ろう

 1.二次救急における ER薬剤師業務

 2.三次救急における ER薬剤師業務

 3.離島・へき地における救急医療への関わり

 

7章 災害医療のリアルを知ろう

 1.災害医療における薬剤師業務

 2.私が災害医療支援に行ってみて

 

8章 ゼロから始める救急外来業務

 これから始める薬剤師、すでに始めた薬剤師のクロストーク 

書評

前田幹広先生(聖マリアンナ医科大学病院薬剤部)

救急外来は、突然発症する症状から鑑別疾患を挙げ、検査・治療を同時に行っていくという、医療の根源となる場所である。救急医、看護師、救急救命士など、従来救急医療に携わってきた医療従事者は「患者を助けたい!」という想いで、医療を提供してきた。そこに近年、薬剤師という新たな職種が加わった。その先駆けとなった薬剤師の先生方が、救急・急変対応についての豊富な経験と知識をもとに、エッセンスをまとめたのが本書である。

「救急外来に配属」と言われた薬剤師は、救急外来に初めて行く日には恐怖を感じるに違いない。薬剤師は、疾患が診断されてから薬物治療に関わるということには慣れているが、症状からのアプローチなどは学んでいない。その結果、薬剤師としてどのように行動すればよいか悩むだろう。

本書は、救急外来でよくみられる症状や疾患について、医学的な知識を補完しながら、薬剤師の視点で執筆されている。医学的な知識を身につけることで、周りの医療従事者がどのように行動するかがみえ、そのうえで薬剤師の視点から、他の職種にはない独自の思考プロセスでアプローチすることが可能となる。救急外来に配属された薬剤師にとって、白衣のポケットに必須な書籍だ。

一般病棟でも、自分の担当する患者がいつ急変するかはわからない。少しでも「患者のために」という想いをもつ薬剤師が読めば、躊躇していた一歩を踏み出すことができるだろう。“服薬指導中に患者の意識が落ちた・バイタルが崩れた”といった目の前で起きる急変や、“検査値が急に異常値になる”“発熱した”など、一般病棟でよく遭遇するケーススタディも盛り込まれており、救急や集中治療に従事していない薬剤師が読んでも、明日にでも使える内容が満載である。

薬剤師としてのプロフェッショナリズムは、「患者を助けたい」という想いなくしては得られない。本書は、そんな薬剤師の想いを具現化し、初めの一歩を踏み出させてくれる。

 

 

今井 徹先生(日本大学医学部附属板橋病院薬剤部)

救急外来業務をすでに実施している、またはこれから関わりたいと思っている、あるいは病棟での急変に対応できるようになりたいと感じている方々は、書名の「薬剤師のためのゼロからわかる救急・急変対応」に興味を惹かれたのではないだろうか。

筆者も表紙から内容を想像してワクワクしながら読み始めたが、本書はいわゆる知識教授型の書籍ではなく、著者陣の経験や薬剤師としての思考がしっかりと入り、症例提示を踏まえて日々の業務にすぐにでも取り入れられる内容で構成された実践本であった。サブタイトルに“救急外来薬剤師のやさしい入門書”とあるが、初学者にもわかりやすく、またエキスパートにも読み応えのある内容であり、バランスの取れた秀逸な書籍である。

筆者自身も救急医療に従事して15年が経つが、救急や急性期医療に精通した徳洲会救急薬剤師研究会のメンバーの経験が豊富に盛り込まれた本書は、とても勉強になった。また、当時ドキドキしながら飛び込んだ救急外来業務を思い出し、本書がもし手元にあればどれだけ心強かったかと回想してしまった。

全体の内容は、第1~5章では患者への薬剤師的アプローチ、さまざまなケーススタディ、緊急病態の薬物療法に関して記載されており、ここまで読めば、ほぼ場違いなく救急外来や急変対応への一歩が踏み出せると思われる。

さらに本書の素晴らしい点として、第6~8章でER・救急・災害医療における薬剤師業務の実際や、著者陣の経験や思いをギュッとまとめたクロストークを読むことにより、知識だけでなく気持ちの面でも背中を押してくれる構成となっている。本書を読んだ薬剤師が救急患者や急変患者に関わり、多くの命を救う一助になることを切に願っている。 

序文

この度は本書を手に取っていただき、誠にありがとうございます。この本は「救急外来で薬剤師業務をしたい! 始めたい!」という初学者向けの入門書であり、同時に「担当病棟での急変に対応できるようになりたい!」という方や「急性期医療の患者に関わることが多い」という方向けの実践書でもあります。症例・ケーススタディを中心とした構成で、「目の前の患者に薬剤師としてどのように関わればよいのか」がわかるHow to本になっています。

救急医療は施設によって利用可能なリソース(設備・装備など)が大きく異なります。大学病院や大規模病院の救命救急センターのような大勢のスタッフが1名の患者の救命に全力を注ぐ「All for One」のシチュエーションもあれば、ER型救急医療施設のように1名のスタッフが複数またはすべての救急患者に応対する「One for All」のシチュエーションもあります。さらに離島・へき地医療では、長期間にわたって1対1の関係、すなわち「One for One」のシチュエーションが続き、そのなかでの急性期医療もありえます。しかしながら、どのような状況下であっても、目の前の患者の命を救うことができるのは、いままさに患者を目の前にしているあなたしかいないのです。

薬剤師の間では長らく対物業務が重視されてきました。これからは対人業務へとシフトチェンジしていかなければならないわけですが、業務内容のみならず人員の体制が十分でない施設も多く存在しているでしょう。それでも「少しでも患者のために何かしたい!」と思っている薬剤師の方が読んで学ぶことのできる本になっています。

2023年現在、救急外来などにおける薬剤師業務はまだまだ全国的な普及に至っていませんが、私の実体験として「救急医療に薬剤師は必要不可欠だ」と強く感じています。本書を読んだ一人でも多くの方が救急患者や急変患者に関わられることを望んでやみません。

薬剤師として“攻めの姿勢”は忘れるな!

“薬のプロ”としてできることを全力で!

 

徳洲会救急薬剤師研究会 会長/札幌東徳洲会病院薬剤部

齋藤 靖弘 

 

 

私が35歳で1990年に岸和田徳洲会病院の心臓血管外科部長として入職したときに手にした「薬効別 服薬指導マニュアル」(株式会社じほう)は、その内容が素晴らしく徳洲会薬剤部の組織力とパワーに感心したことを記憶している。現在は徳洲会から離れてしまったようだが、いまだに版を重ねていると聞いている。

今回、徳洲会薬剤部の救急薬剤師研究会より本書が上梓されることとなった。これは徳洲会グループの創設者である徳田虎雄現名誉理事長が1973年に最初の病院を設立以来50年にわたり、「生命だけは平等だ」の理念のもと、「いつでも、どこでも、誰でもが最善の医療を受けられる社会の実現」という社会改革運動に邁進してきた結果の一つである。

徳洲会は全国の都市部から離島・へき地に至るまで、どんな状況においても救急患者を断らないことを医療人の矜持として実践してきた。救急医療の現場で、医師、看護師、薬剤師、その他スタッフが協力して患者の命を救おうと奮闘してきたなかで、救急医療に携わる薬剤師が薬剤師向けのテキストを作ったことは大変意義のあることだと思う。

これまで経験・実践したことをそのままにせず、エビデンスに基づきわかりやすくまとめた本書は、これから薬剤師が救急現場に臨む際の一助になると確信している。

今後、さらに症例を積み重ね、日々進歩する医療にキャッチアップしながら改訂していくことを希望する。そして、一人でも多くの命が救われることを切に願う。

 

医療法人徳洲会 理事長/一般社団法人徳洲会 理事長

東上 震一