対応の流れと治療のポイントがわかる
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2020年3月17日 購入者特典のご案内
訂正情報
第1章 総論
1 がん薬物療法の基本
2 有効性・安全性を正しく評価するために
3 免疫チェックポイント阻害薬と免疫関連有害事象
第2章 副作用:殺細胞性抗がん薬/分子標的薬
1 発熱(発熱性好中球減少症)
2 高血圧
3 静脈血栓塞栓症
4 悪心・嘔吐
5 下痢
6 便秘
7 腫瘍崩壊症候群
8 電解質異常(高Ca血症)
9 電解質異常(低Na血症)
10 電解質異常(低Mg血症)
11 末梢神経障害
12 手足症候群
13 皮膚障害(ざ瘡様皮疹、爪囲炎)
14 血管外漏出
15 口腔粘膜炎
16 味覚異常
17 過敏反応
第3章 副作用:免疫チェックポイント阻害薬
0 はじめに:九州大学病院の「チームICI」
1 間質性肺疾患
2 下痢・大腸炎
3 肝障害
4 腎障害
5 1型糖尿病
6 内分泌障害
7 神経・筋障害
8 皮膚障害
9 インフュージョンリアクション
10 心血管障害
寺田智祐先生(滋賀医科大学医学部附属病院薬剤部 教授・薬剤部長)
近年のがん薬物療法の進歩はめざましく、毎年、多くの抗がん薬が新たに承認を取得しています。ニボルマブなどの免疫チェックポイント阻害薬をはじめ、新たな作用機序の抗がん薬が増え、それに伴い副作用も複雑化・多様化しています。このような状況では、がん薬物療法のハードルの高さを感じる薬剤師も多いかもしれませんが、本書にはそんな薬剤師の肩の力を抜いてくれる工夫が満載です。
まず、最大の特徴と言えるのは、27項目の副作用ごとに作られた「フローチャート」です。抗がん薬の副作用を疑うとき、フローチャートから見通しを立て、副作用の「見方」を整理し、対処法の基本を踏まえて速やかに行動を起こすことができます。このわかりやすさとスピード感は、とりわけ機動性が重要な外来がん薬物療法に関わる病院・薬局の薬剤師にとって、大きな武器になると考えます。
さらに、各フローチャートには最前線で活躍している医師・薬剤師・看護師によるコンパクトな解説が添えられており、評価の具体的方法、推奨される薬物療法/非薬物療法、対処後の評価や緊急時の対応が容易に理解できます。また、項目ごとのCase studyでは実際の対応を学ぶことができ、まさにがんチーム医療のエッセンスがぎゅっと詰まった、明日から使える実践的手引き書です。免疫チェックポイント阻害薬の有害事象に関する解説、チームマネジメントなどの豊富な記載も、本書の大きな魅力の一つです。
「副作用」という薬剤師が業務上注力している単語を軸にしているため、薬剤師にとって馴染みやすい構成になっています。すべての薬剤師に、自信をもってお勧めできる一冊です。
高山浩一先生(京都府立医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学 教授)
がん治療の3本柱は手術、放射線治療、薬物療法とよくいわれます。現在もその枠組みに変わりはないですが、私が医師になって30年あまりの年月で最も大きく変貌したのは薬物療法かと思います。実際に多種多様な抗がん薬が診療の場に登場してきました。
抗がん薬によるがん治療を進めていくうえで、副作用は避けることのできない問題であり、その対応はとても大事です。いくら効果があっても副作用で治療を継続できなければ患者さんの恩恵にはつながりません。本書は抗がん薬のさまざまな副作用に対応すべく、九州大学病院の先生方が中心となって一冊の本にまとめられました。
特徴の一つは標題にもあるとおり、副作用への対応方法がフローチャートとして明示されていることです。副作用をどのように評価し、どのように対応すべきか具体的に書かれています。2つ目は免疫チェックポイント阻害薬の章立てを別にしてあることです。同剤には免疫関連有害事象とよばれる、これまでわれわれが経験したことのない副作用があり、九州大学病院では多職種によるTeam ICIをいち早く立ち上げてこの問題に取り組んでこられました。本書にはそこで培われた工夫が盛り込まれています。3つ目は各項目に看護ケアのポイントが記載され、具体的な事例をあげて看護師の視点からきめ細かい対策が示されていることです。
編者の代表である渡邊先生は九州大学病院のがん専門薬剤師として、多職種によるがんのチーム医療を推進して来られました。その豊富な経験をもとに、本書は誰が読んでもわかりやすくまとめられています。本書により抗がん薬の副作用が軽減され、多くのがん患者さんの治療が円滑に進むことを願っております。
入江佳子先生(筑波大学附属病院 緩和ケアセンター・外来化学療法室)
九州大学病院といえば、がん薬物療法のチーム医療に熱心に取り組み、高い専門性をもったスペシャリストが最新知見を多数発信する、国内トップクラスのオンコロジーチームである。
本書は、九大のスペシャリストが中心となり、従来の殺細胞性抗がん薬や分子標的薬の有害事象はもとより、近年急速に適応拡大されている免疫チェックポイント阻害薬(ICI)、そしてICIの併用療法など、ますます複雑化するがん化学療法の副作用に関して丁寧に解説されている。
第1章の総論では、がん薬物療法の基本がコンパクトにまとめられており、初学者の導入にも、ベテランの復習にもわかりやすい。第2・3章では、副作用ごとのメカニズム、アセスメント、対処方法について詳細に解説され、フローチャートにまとめられている。そして、症状ごとの看護ケアのポイントとともに、Case Studyではいわゆる“患者あるある”が想起されるケースが取り上げられ、看護師が具体的に患者ケアをイメージしやすくなっている。またColumnでは、「これを知っていたらプロっぽい」と感じる、エキスパートとして知っておくべき情報が記載されている。
薬物療法に関する書籍はターゲットが職種ごとに分かれているものが多いが、本書はどの職種にも必要な知識が満遍なく描かれており、多職種が同じレベルの知識を習得し、共通言語をもってチーム医療を実践できる秀逸な参考書であると確信した。九大病院の『チームICI』のような、しっかりとした組織化、質の高い仕事を目指す、がん薬物療法・患者ケアに携わるすべての医療従事者の必携書となる一冊であり、チームメンバーにぜひ推薦したい。
濱 敏弘先生(がん研究会有明病院 院長補佐・薬剤部長)
がん薬物療法の進歩には著しいものがある。その要因はいくつかあるが、まず新規治療薬の開発がある。殺細胞性抗がん薬、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬など多くの種類の治療薬が登場している。そしてそれと同時に、がんを引き起こす遺伝子の解明が進み、患者個人にとって最適な治療法(precision medicine)を選択し実施することができるようになったことがあげられる。さらに、最適な治療を完遂するための支持療法薬を含むレジメンの普及と、それを実施するチーム医療がある。
チーム医療において薬剤師の専門性は、副作用の早期発見、重篤化回避のためのモニタリングと処方介入であり、すでにこのような薬剤師の職能は患者や他職種から高く評価されているところである。
本書は、がん薬物療法を効果的かつ安全に実施するための、副作用モニタリングツールの一つであり、九州大学病院のがん薬物療法に携わるチームが中心となって、全国のがん医療の第一線で活躍している薬剤師、医師、看護師が執筆した一冊である。
本書の特徴は、27の副作用について、判断基準や対処法をフローチャートで視覚的に示し、それに続く本文ではそのポイントをわかりやすく解説している。本書の帯に記載されている『見て・読んで・実践できる』というフレーズどおりの一冊である。類書も多いが、看護ケアのポイントやコラムの内容は、看護師の視点や薬剤師が気づきにくい情報を多く含み、薬剤師にとって有用である。またCase studyでは、経験が少ない若い薬剤師、初学者にとって、症状の経過や注意するべきポイントを学ぶことができる。がん薬物療法に関わるすべての薬剤師にとって、本書は良書である。
◆監修の序
古来より、「毒薬変じて薬となる」、「毒を以て毒を制す」などという諺が伝えられてきた。確かにくすりは諸刃の剣である。使いようによっては素晴らしい成果を産むものの、使い方を誤ると厳しい副作用に苦しむことになる。その最も典型的な例が抗悪性腫瘍薬である。事実、最初に登場した細胞障害性抗がん薬は、悪名高い毒ガス、マスタードガスの誘導体である。また、各種悪性腫瘍に頻用されるタキサンは、昔、毒矢に使用されていた成分を応用したものであり、タキサンという呼称は毒素を表すトキシンと語源を一にする。
副作用の少ない夢の薬として脚光を浴びつつ登場したEGFRチロシンキナーゼ阻害薬は、間質性肺炎の多発で社会問題化した。これに続くドライバー遺伝子阻害薬も同様で、間質性肺炎を中心に細胞障害性抗がん薬とは異なるプロフィールのさまざまな副作用を引き起こす。血管新生阻害薬も、出血のみならず、高血圧症や蛋白尿などの副作用を来す。そして、いま最も脚光を浴びているくすり、免疫チェックポイント阻害薬は、特徴的副作用である免疫関連有害事象(irAE)を起こす。
作用機序の異なる抗悪性腫瘍薬が次々に登場することにより、がん薬物療法の有効性が高まり、生命予後は延長し続けている。当然のことながら、副作用の病態、発現部位、発現時期は異なる。より薬効を高まるために、併用療法が積極的に開発されている。そのために副作用の発生頻度、責任薬剤の同定、薬物相互作用の推定が極めて困難になってきた。すなわち、副作用の驚異的な多様化がみられつつある。がん薬物療法の発展は、治療を安全に進めるうえでの大きな悩みとなっている。
主作用はcommon affairであるが、副作用はrare eventである。そのために、医療従事者にとっては、それぞれの副作用は未知であったり経験に乏しいことが多い。副作用対策におけるタイトなエビデンスも少ない。早期発見により安全に薬物療法を継続することができる副作用、致死的・永続的であるために厳重な監視と早急な対応が必要な副作用、経過観察しておけば自然軽快する副作用など、その対応もさまざまである。このような背景をもとに、本書は比較的commonな副作用と、臨床的に重要な副作用をまとめ、迅速かつ適正に対応できることを目的にフローチャート形式でまとめた。安全かつ適切ながん薬物療法の一助となれば幸いである。
地方独立行政法人 北九州市立病院機構 理事長/九州大学 名誉教授
中西 洋一
◆編集の序
がん薬物療法において、抗がん薬の副作用を完全に防止することは不可能と言わざるを得ない。抗がん薬の効果を十分に発揮するためには、医師・看護師・薬剤師など医療従事者がその副作用に関する知識を習得するとともに、その予防・対処法にも精通しておく必要がある。近年、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の新たな登場により、医療現場で対処すべき副作用の種類は格段に増えている。ICIの安全性のエビデンスはいまだ十分ではないが、がん薬物療法において、ICIは既存の抗がん薬あるいはICI同士の併用療法が主流になりつつある。しかし、医療従事者がICIにより発現する副作用に対して適切に対応することは容易でなく、とりわけ併用療法により発現する副作用には誰もが悩みながら対応しているのが現状である。
九州大学病院ではこのような背景を鑑み、ICIを安全に使用するための診療科・職種横断的なチームである「チームICI」を結成し、ICIの適正使用推進のための体制構築を図ってきた。特に、免疫関連有害事象(irAE)対策アルゴリズムは、irAE発現時の対策を標準化(アルゴリズム化)したものであり、医療従事者がICIの副作用対応に悩む際の道しるべとなっている。本書を執筆するにあたり、これらのirAE対策アルゴリズムを念頭に置きつつ、臨床現場において、殺細胞性抗がん薬や分子標的薬、ICIの副作用が想定された際の判断基準やその対処法を、フローチャートを用いて視覚的に示すことにした。さらに、副作用やその対処法に関するわかりやすい解説を加えることで、医療現場での実践的な対応が可能になるよう心がけた。
本書が、がん治療を専門にする医療従事者のみならず、がん治療に関わるすべての医療従事者にも参考となるような一冊になればと期待している。そして、本書が広く活用され、患者さんに向けた、良質かつ安全で安心できるがん医療の提供に役立つことを切に願っている。
九州大学病院薬剤部 副薬剤部長
渡邊 裕之
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