感染症非専門医・薬剤師のための 感染症コンサルテーション

実症例から迫るアプローチ!

¥3,520

治療に困ったときの「実際どうすればいい?」がすべてこの1冊に!
うまくいく感染症診療の秘訣をDr. 岸田がレクチャー!

どの診療科でも遭遇するのが感染症の悩ましいところ。患者の病歴・症状、検査値、起因菌、薬剤など複数の要素をどうひも解いて正しい診療に結びつけるのか、気鋭の総合診療医・感染症医が大事なポイントをクリアに解説します。さらに著者の豊富な経験から、主治医とのコミュニケーションなどコンサルテーションのコツを余すところなく披露。日本でAntimicrobial Stewardshipを実現するための秘訣がつまった1冊です。

訂正情報

編著
著者:岸田 直樹
総合診療医・感染症医(感染症コンサルタント)
一般社団法人Sapporo Medical Academy代表理事
発行日
2014年6月
判型
A5判
ページ数
308頁
商品コード
46021
ISBN
9784840746021
カテゴリ
目次

第1章 コンサルテーション基本編

1.カテーテル関連血流感染症① 合併症がない場合

2.複雑性尿路感染症

3.市中細菌性髄膜炎

4.カテーテル関連血流感染症② 合併症がある場合

5.院内下痢症(クロストリジウム・ディフィシル感染症)

6.皮膚軟部組織感染症

7.市中肺炎

8.良くならない肺炎

9.良くならない胆管炎


第2章 コンサルテーション応用編

10.感染性心内膜炎① 合併症がない場合

11.感染性心内膜炎② 合併症がある場合

12.院内細菌性髄膜炎

13.腹腔内感染症(二次性腹膜炎)

14.抗菌薬による副作用がある患者への対応①

15.抗菌薬による副作用がある患者への対応②

16.がん患者の感染症① 固形がんで多発転移がある患者の発熱へのアプローチ

17.がん患者の感染症② 発熱性好中球減少症へのアプローチ


第3章 コンサルテーション血液培養編

18.「血液培養からこんな菌が生えてきたんだけど…」という相談① バシラスの場合

19.「血液培養からこんな菌が生えてきたんだけど…」という相談② 黄色ブドウ球菌の場合


付録

・治療の指標となるパラメーターチェックリスト(巻頭)

・主な抗菌薬・抗真菌薬の用量と使い方一覧(巻末)

序文

臨床感染症は近年大きく変化しています。今後もまだ10年、いや20年近くはさまざまな点で変化の連続と思いますが、それにキャッチアップできている医療従事者とそうでない人の差が現場ではとても大きくなってきている印象です。適切に教育を受けた専従の臨床感染症専門医が各病院に数名以上常駐して臨床感染症のコンサルテーションに対応するというのが理想なのかもしれませんが、そのような時代はまだまだ先かもしれません。なぜなら、日本はこれから世界に類を見ない未曾有の少子高齢化社会を迎えます。人口が全体的に減少ではなく少子高齢化です。つまり、感染症専門医にかかわらず、医療従事者にかかわらず、すべてにおいて人が足りなくなることが予想されています。よって、これから日本が迎える未曾有の少子高齢化社会においては新しい職種が爆発的に増えるという状況はなかなか難しいのが現状なのですが、抗菌薬適正使用は急務の問題です。

そんななか、臨床感染症はすでに感染症非専門医(特に総合診療医の先生方)が院内で信頼されコンサルテーションを受け、素晴らしいマネジメントをされていたりします。また最近では、Infection Control Nurse(ICN)の活躍により、Infection Control Doctor(ICD)の役割が変化してきていて、ICDにこのような臨床感染症の相談が来て対応していただいています。相談する医師が少ない医療機関では、ICNが対応しているところも正直あります。さらに臨床薬剤師が病棟で活躍するようになり、病棟薬剤師さんにも抗菌薬に関する相談が来ています。意外に聞くのは、細菌検査室からの培養結果の報告時に細菌検査技師さんに「抗菌薬どうしたらいいの?」と聞いてくる場合も少なくないようです。このように、臨床感染症はすでに多くの感染症非専門医(特に総合診療医)、メディカルスタッフのご活躍により支えられており、これからもよりいっそうその傾向は強くなると感じます。しかし、実際の現場で対応していただいている感染症のコンサルテーションはまだまだ変化し続けている日本の臨床感染症の現状においては、さまざまな意味で難しいものも多く、そのような困った症例の相談がよく自分のところにも来ます。

そこで、この領域においては特に臨床薬剤師さんに臨床感染症のサポートをしていただくことが、その専門性も活かして活躍でき重要と考え、じほうの雑誌『月刊薬事』での連載が開始されました。多くの薬剤師さんが活躍していただくことが目的だったのですが、意外にも総合診療医や研修医など感染症非専門医の先生方からもご好評で、実際の症例やコンサルテーションへの対応にとても役立つとのお言葉をいただきました。感染症はチーム医療で、欧米のようにできれば明確な役割分担といきたいところですが、どの職種も人材不足で、かつ未曾有の少子高齢化を迎える日本の現状からは難しいかもしれません。しかし、このまま日本はできないとあきらめるのもどうかと思います。何より耐性菌が増加している現状への対応は急務と考えます。日本型の感染症チーム医療としてこのような職種をまたいだ臨床感染症コンサルテーションへの対応は、日本が医療界においてこの未曾有の少子高齢化社会を軟着陸する世界に誇れるハイコンテクストなチーム医療、そして、日本ならではのAntimicrobial Stewardshipではないかと感じています。ぜひ、感染症非専門医、メディカルスタッフの方のお力を臨床感染症のマネジメントにお貸しいただけたら幸いです。

PK-PDに基づいた抗菌薬の投与法についてだけでなく、適切な培養提出とその解釈、そして適切な治療期間への知識とそこへのサポートを、感染症に興味を抱いていただいた皆さんにもお願いできればと考えます。特に感染症は、医師だけではなく看護師・薬剤師・細菌検査技師でのチーム医療が重要な代表的分野と思います。医師がいなくとも嘆かずに、薬剤師・看護師・細菌検査技師でチームをつくり、このチームで手分けして介入することでもかなりのアプローチが可能と感じます(いや、むしろ医師からアプローチするよりも何倍も良かったりすることもあると感じます)。

本書では、感染症チーム医療の一員として、感染症診療をサポートするために皆さんに知っておいてほしい知識などを実際の症例をもとに提示します。特に、「具体的な診断名が下されているなかでの適切な抗菌薬の選択・量・投与間隔・投与期間へのサポート」では薬剤師さんの存在はとても大きいと感じます。またチーム医療では、適切な知識をもっていても、それを伝えるコミュニケーションスキルが重要になります。そのような伝達方法についても可能なかぎり提示し、明日から使える実践的な内容を提供できればと考えています。

岸田 直樹