「これ副作用?」と思ったときの3つの推論ステップ

副作用のみかた・考えかた 2

¥3,850

●副作用の推論、鑑別の考え方をわかりやすい3ステップでレクチャー。
●推論の思考過程を1枚のイラストで表現したマインドマップを掲載。
●同じ症例を薬剤師と医師の目線で解説。コミュニケーションのヒントも得られる。
 
その症状は薬の副作用か、それとも別の原因か? 副作用の特徴を言葉として知っていても、実際にその可能性を見極めるとなると一筋縄ではいきません。本書は患者に何らかの症状や検査値異常が現れたとき、副作用の推論・鑑別の考え方をやさしく説く1冊です。反響を呼んだ『3ステップで推論する 副作用のみかた・考えかた』の2冊目にあたる本書は、1冊目と同じく実践的なケーススタディで、より多彩な副作用を取り上げています。さらに、症例を経験した薬剤師の思考過程を表現した「マインドマップ」を掲載。鑑別の流れが一目で理解できます。
薬剤師なら病院・薬局問わず、さらに医師・看護師にとっても大事な「副作用のみかた」。薬を正しく使うための知識とコツが1冊に詰まっています!
編著
岩井 大、鈴木 信也、今井 徹、山田 和範/編
発行日
2022年9月
判型
A5判
ページ数
400頁
商品コード
54613
ISBN
9784840754613
カテゴリ
目次

 第1章 副作用に遭遇したときのキホン

Lesson 1 副作用報告の書き方のポイント

Lesson 2 一からわかる医薬品副作用被害救済制度

 

第2章 実践! 3ステップで推論する副作用

Case 1 この「浮腫」はピオグリタゾンによるものですか?

Case 2 この「水疱」はアモキシシリンによる重症薬疹ですか?

Case 3 この「震え」はドパミン受容体拮抗薬によるものですか?

Case 4 この「血小板減少」はヘパリンが原因ですか?

Case 5 この「発熱」はビスホスホネートの急性期反応ですか?

Case 6 この「左足の震え」はメトロニダゾールによるものですか?

Case 7 この「意識障害」はSGLT2阻害薬によるケトアシドーシスが原因ですか?

Case 8 この「体重増加」はがん化学療法によるものですか?

Case 9 この「急性腎障害」はアシクロビルが原因ですか?

Case 10 この「咳」は降圧薬によるものですか?

Case 11 その「下痢」が良くなったのはファモチジンのおかげですか?

Case 12 この「慢性血栓塞栓性肺高血圧症」は抗精神病薬によるものですか?

Case 13 この「ショック」はボリコナゾールによるものですか?

Case 14 この「低ナトリウム血症」はルビプロストンによるものですか?

Case 15 この「老年症候群」はポリファーマシーによるものですか?

Case 16 この「筋力低下」は免疫チェックポイント阻害薬によるものですか?

Case 17 この「頭痛」は一酸化窒素供与体誘発頭痛ですか?

Case 18 この「発熱」はST合剤による薬剤熱ですか?

Case 19 この「意識障害」はグリメピリドによるものですか?

Case 20 この「下痢」はジスチグミンによるものですか?

Case 21 【薬局編】この「血圧上昇」はデュロキセチンによるものですか?

序文

思い起こせば私が薬剤師になりたてのころ、薬剤師の臨床業務は「患者さん」よりも「薬」をみている風潮があったように思います。先輩からは、薬剤師は薬のことしかアセスメントしてはいけない、患者さんから症状のことを聞かれても答えてはいけない、などと教わり、そういうものなのだと当時はさしたる疑問も抱きませんでした。

しかし、臨床において患者さんに深く関われば関わるほど、その思考回路ではまったく歯が立たないことを痛感していきます。患者さんが訴える症状を短絡的に薬と結びつけ、安易に提案した処方内容では患者さんの苦痛を和らげることはできず、医師からの信頼を得ることもできませんでした。

それから二十数年が経ったいま、本書の企画者である東京薬科大学の川口崇先生が巻き起こした薬剤師による臨床推論のムーブメントは大きなうねりとなり、薬剤師が「薬」だけでなく、病態や疾患も含めて「患者さん」をみることが至極当たり前のこととして行われるようになっています。

 

さて、本書の楽しみかたについて少し述べさせていただこうと思います。

臨床で遭遇した○○の副作用について調べたい! と思って本書を紐解けば、薬剤師ならではの視点で書かれた、時にマニアックと言ってもよい多彩な副作用の知見を得ることができます。ただし、本書で語られている見解は読者の皆さんが遭遇した症例にそのままでは応用できない可能性があります。本書は個々の症例をベースに副作用にアプローチしており、皆さんが知りたいのと同じ薬の同じ副作用が載っていたとしても、既往や併用薬など病歴が異なることで違った思考が展開されるからです。本書は第一線で臨床推論を行っている薬剤師の生の現場を披露しており、その思考過程を頭の中からそっくりそのまま紙面に落とし込んでいることが大きな特徴です。

第2章は以下のように構成されています。②~④を本書では「3ステップ」と呼んでいます。

①症例提示

②被疑薬が症状の原因である「もっともらしさ」の考察

③被疑薬以外が症状の原因である「もっともらしさ」の考察

④考えをまとめてアクション

読者の皆さんには、①症例提示の部分でいったん立ち止まり、薬の副作用なのか? 副作用だとすれば被疑薬は何なのか? 類似した症状を呈する疾患として何を鑑別すべき? といったことを自分なりに考えてから②以降へ読み進めることをお勧めします。自分では思い浮かばなかった思考が解説で展開されていれば、それが学びとなるはずです。

②~④の3ステップでは、副作用が疑われる症状を訴える患者に遭遇した場合、頭から副作用と決めつけて行動するのではなく、いろいろな可能性を検討することが大切です。その過程では、薬理学や薬物動態学、薬物相互作用など薬剤師の専門知識をフル活用し、副作用である“もっともらしさ”を吟味します。さらに、副作用と類似した症状を呈する疾患についても、その“もっともらしさ”を検討します。そして、副作用である“もっともらしさ”と、その他の疾患である“もっともらしさ”を比較し、薬剤師としての考えをまとめて行動に移します。

 

本書は2018年に発刊した『3ステップで推論する副作用のみかた・考えかた』の続編にあたります。今回、2冊目を作るにあたって、各ケースの最後に「マインドマップ」を載せました。マインドマップとは、思考の内容や過程を可視化して図に表したものです。これにより、各々の症例で薬剤師が副作用の可能性や他の疾患の可能性をどう考えたのか、一目で理解することができると思います。

臨床はとても複雑で、さまざまな要因が絡み合っており、A(身体所見や検査値など)という要因があるからB(副作用や疾患など)だと迷いなく結論が出ることはほとんどありません。特に、副作用はあらゆる疾患の可能性を除外してはじめて診断にたどり着く、いわゆる「除外診断」といわれています。

副作用っぽいけどそうとも言い切れず、その他の疾患の可能性も否定しきれない……本書ではそのような著者の苦悩がありのままに記されていますが、それは臨床では“あいまいさ”に満ち溢れていることが常であり、その“あいまいさ”も思考の一部として取り入れることが大切だと思うからです。そのような“あいまいさ”も含めた思考の展開をお楽しみいただければと思います。

本書で副作用へのアプローチ方法のイメージがつかめれば、きっと患者さんの抱える苦痛を和らげることができ、チーム医療のなかでも信頼を得られる薬剤師になることは間違いありません。

 

岩井 大  鈴木 信也