よくある疑問にサラリと答える!
●Q&A形式、症例ベースで考え、最適な薬物療法や服薬指導を実践的に学べる!
訂正情報
Ⅰ押さえておきたい 抗凝固療法のよくある疑問30
1)基礎知識編
抗凝固療法の基本的な専門用語について教えてください。
抗凝固薬と抗血小板薬の使い分けを教えてください。
抗凝固薬(ワルファリン、DOAC)の特徴と使い方を教えてください。
抗凝固薬の薬物動態(吸収、分布、代謝、排泄)について教えてください。
抗凝固療法の適応疾患について教えてください。
抗凝固薬の出血リスクについて教えてください
アドヒアランスの重要性について教えてください。
抗凝固薬の治療/ 副作用モニタリングとTTRの意味を教えてください。
DOACに関する大規模臨床試験の結果を教えてください。
ワルファリンの有効性と、そのエビデンスを教えてください。
患者への問診のポイントを教えてください。
抗凝固薬の投与設計について教えてください。
ワルファリン服用患者へのブコローム併用について教えてください。
2 )クリニカルクエスチョン編
抗凝固薬導入時、外来患者にはどれくらいの間隔でフォローする?
患者指導では、何をどう伝える?
患者の私生活で注意することは?
ワルファリン服用患者の食事で注意したいことは?
心房細動に対する抗凝固療法のリスクスコアはどう使えばいい?
維持透析を含む末期腎不全患者に抗凝固薬を投与してもいい?
肝機能低下患者に抗凝固薬が必要な場合、どういう点に気をつける?
抗凝固療法の効きにくい患者とは?
PT-INRが変動しやすい患者のマネジメントはどうすればいい?
高齢者の抗凝固療法で注意することは?
微小脳内出血を指摘された患者の抗凝固療法は?
周術期の対応①-ワルファリンの中止・継続・再開はどうすればいい?
周術期の対応②-ヘパリンブリッジの有無はどう判断する?
周術期の対応③-DOACは使ってもいい?
ワルファリンの投与設計(ノモグラム) はどうすればいい?
抗凝固薬内服中に大出血した患者には、どう対応すればいい?
抗血小板薬と抗凝固薬を併用しても大丈夫?
Ⅱケースから学ぶ!患者背景に応じた抗凝固療法の最適化
1)シチュエーションでみる抗凝固薬の使い方
抗凝固薬導入の患者
ワルファリン導入の患者
入院患者
外来患者
観血的検査、周術期の患者
静脈血栓塞栓症の患者
消化管出血の既往患者
2)特殊病態 ・ 併存症患者への抗凝固薬の使い方
超高齢者
慢性腎臓病、透析の患者
心不全患者
がん患者
抗結核薬服用患者
コラム
①心房細動や静脈血栓塞栓症以外に抗凝固療法を行う場合
②心房細動のアブレーション周術期における経口抗凝固薬の取り扱い
③心房細動のない慢性心不全に血栓塞栓症の予防は必要か?
柴田 啓智(済生会熊本病院薬剤部)
史録のような1冊である。そういう思いに至ったのには、大きく2つの側面があるように思う。
まず1つ目は、経口抗凝固薬、特にDOACの史録という面。経口抗凝固薬がワルファリンしかなかった時代に鳴り物入りで登場したDOAC。PT-INRのモニタリングが必要ないことを簡便なように誤解し、ほどなく提出されたブルーレター。出血と梗塞の間で抗凝固療法を継続することの怖さと難しさを、どれほどの医療者が感じていただろうか。それらを真摯に受け止めた筆者らだからこそ辿り着いたクリニカルクエスチョンの数々は、DOACのエビデンスを提示しながら網羅的に臨床で遭遇する問題点を指摘している。まさに、ここからはじめれば抗凝固療法のこれまでが理解でき、これからを受け入れるのが実にスムーズであろう。DOACが使用できるようになって10年という節目に相応しい内容である。
そして2つ目、京都桂病院におけるチーム医療の史録という面である。チーム医療の形がそれは実に涙ぐましいまで美しい。タスクシフトに注目が集まるなか、任せる側の医師の心配と、任される側の薬剤師の不安を埋めるのは、信頼と実績ではないだろうか。ケースを通して垣間見える京都桂病院におけるチーム医療は、長い歴史と強い絆を感じるに十分である。薬剤師は、ともすれば薬物療法のメリットとデメリット、ここでは抗凝固療法の抗凝固効果と出血リスクを提示することに留まり、決定に関与しないことが多いように思う。もちろん最終決定は医師なのだが、どれだけ力強く提案し、その後のフォローアップを確実に行うかは、いかにその薬物療法に薬剤師が責任をもつかという決意の表れだと思う。提示されたすべてのケースに決意が示されている。
この1冊は抗凝固療法に向き合うために、より良いチーム医療を目指すために必読である。
児島 悠史(ひより薬局/Fizz-DI)
薬は、「期待できる効果」と「負うべきリスク」を天秤にかけて考えるのが基本です。しかし、抗凝固療法ではこれが「脳梗塞などの予防」という目に見えない効果と、「出血」という目に見えるリスクの比較になるため、医療者と患者の認識によくズレが生じます。この情報化社会では、患者の病識・薬識がいつ変わるかもわかりません。そうした中でわれわれ薬剤師は、患者が適切な治療を安心して継続できるよう、この治療が人生にどんなメリットをもたらすのか、その時々の状況に応じて細かく評価し、説明できなければなりません。
しかし、長くワルファリンが唯一の治療薬だった抗凝固薬には、近年相次いで新薬が登場し、治療の選択肢は大きく広がっています。こうした情報量の急増で抗凝固療法に苦手意識を抱いている薬剤師は、多いのではないでしょうか。
そんな薬剤師をやさしく導いてくれるのが、本書です。現場の疑問に答える際の考え方から、今さら聞きにくい専門用語の解説まで、平易な言葉でまとめられているため、これまで抗凝固療法を苦手にしていた人でも難なく読むことができます。また後半では、現場の医師・薬剤師はどんな情報を基に、何を考え、どういった方針を決めるのか、といった「エビデンスを適応する過程」が仮想症例ベースで紹介されているため、知識と現場をつなぐ考え方を学ぶこともできます。きっと、多くの薬剤師にとって、抗凝固療法を「自分の得意分野」にするきっかけになると思います。
赤尾 昌治(国立病院機構 京都医療センター循環器内科)
本書は、京都桂病院心臓血管センターの不整脈チームリーダーである溝渕正寛先生が、抗凝固療法について解説した書です。京都桂病院は、京都市内西部の基幹病院の一つであり、市内有数の循環器センターです。溝渕先生とは、同じ京都市内の不整脈領域で活動しているご縁で、多施設共同研究や地域の講演会などでご一緒する機会が多く、もう10年近い付き合いになるかと思います。先生は、常に笑顔を絶やさず、語り口も穏やかで、何事に対してもフェアな立場から率直に意見を述べられ、とてもスマートな雰囲気の漂うナイスガイです。先生にとっては、本書が初の著書となるものと思いますが、それが彼の最も得意とするカテーテルアブレーションではなく、抗凝固療法であったことは少し意外な印象ももちましたが、「サラリと答える!」のタイトルに彼らしいスマートさを感じました。
抗凝固療法は、溝渕先生が序文でも書いておられる通り、「ゴールの見えないマラソンのような治療」であり、「医療従事者側のロジックと患者さん側のロジックの間に横たわる暗くて深い川」のために、互いの思いがすれ違って一筋縄ではいかない治療だと思いますが、「それが臨床の難しさであり、面白さ」だと思います。患者さんごとに異なるさまざまなシチュエーションを頭に入れながら「悩み、考え、実践している」わけですが、「サラリと答える」ために、相当な勉強と経験を積み重ねられたことが本書の隅々からにじみ出ています。
抗凝固療法の書籍は数多ありますが、本書の際立つ特徴は、薬剤師さんとの「医薬連携」です。後半のケーススタディでは、すべての症例で野崎薬剤師とのダイアローグと「連携して患者をフォローアップ」の項目が掲載されていますが、そこに溝渕先生と薬剤部の先生方との日々のコミュニケーションの蓄積が透けてみえ、レベルの高い医薬連携に感銘を受けました。抗凝固療法に関わる医師や、薬剤師を始めとするコメディカルの皆さんに、自信をもって本書をお薦めします。
抗凝固療法の目的は、究極的に「血栓塞栓症の予防」です。その最たるものが、脳梗塞や静脈血栓塞栓症といった重篤な疾患です。その予防効果は科学的に確立しており、そのことは疑いようがありません。ところが抗凝固療法は、日常生活のなかで「目に見えてわかる」効果がないばかりか、「いつまで治療すればいい」というゴールも見えないのです。時には出血といった問題が生じ、他の合併症や疾患との兼ね合いで治療の継続が難しくなることもあります。
このゴールの見えないマラソンのような治療をひたすら続けて行くことの難しさを、医療従事者は本当に自覚しているのでしょうか?個々の患者さんにはそれぞれの生活があり、人生があります。そのなかで抗凝固療法という一つの治療がその患者さんの人生に占める割合は決して大きくはないはずですが、われわれはそれがあたかも人生における最優先事項のように指導しがちです。しかし、相手を理解しない一方通行のコミュニケーションは確実に破綻しますし、最終的に抗凝固療法による恩恵を享受できない患者さんの不利益となります。
本書は、医療従事者側のロジックと患者さん側のロジックの間に横たわる暗くて深い川に橋渡しをして、より安全で確実な抗凝固療法を継続するための一助とするための入門書として執筆しました。エビデンスやガイドラインに基づくのは当然ですが、実臨床ではそれだけでは解決できない問題が日々発生します。本書では、われわれが抗凝固療法にまつわるさまざまな問題にどのように悩み、考え、実践しているのかを提示し、読者の皆さんが「自分ならどうするか?」という当事者目線で考えていただくことを目指しています。結果として、時には合理的な結論にならないこともあるでしょう。それが臨床の難しさであり、面白さともいえます。
単なる知識の獲得ではなく、抗凝固療法の臨床現場における問題解決プロセスの考え方を身につけていただくことこそが本書の最大の目標です。抗凝固療法の必要な患者さんにとって本書が真の利益となることを願っています。
2019 年12 月
京都桂病院心臓血管センター・内科
溝渕 正寛
内服の抗凝固薬は長い間、ワルファリンしかありませんでしたが、近年は異なる作用機序をもつ種々の抗凝固薬が加わり、その管理はより複雑になっています。しかし、基本的に考えることは同じで、報告されている各々の抗凝固効果や有害事象と患者さんの現状を照らしあわせて、どのように抗凝固療法を実践していくのかということに変わりはありません。
われわれはこれまで数多くの抗凝固療法に関わってきました。薬剤師として最優先してきたことは、エビデンスに基づいた薬物治療を提案することです。しかし、実際の臨床現場では、過去の報告からだけでは明確な答えを導き出せないことも多々あります。そんなとき、決断へと導いてくれたものは自己の経験と同僚の医療従事者からの助言でした。病状や患者さんを取り巻く環境はそのときどきに応じて異なり、われわれはその一人ひとりの症例と丁寧に向き合い、経験を積み重ねてきました。この本のなかにはエビデンスに基づいた情報はもちろんですが、そのような日々患者さんに関わるなかで発見した気づきや経験から学んだことも書かれています。特に、はじめて抗凝固療法を実践していくうえでもう少し知りたいエッセンスを、より具体的にわかりやすくまとめることを心がけました。皆さんの日々の業務のなかの痒いところに手を届かせてくれる、そんな本になったのではないかと思います。
薬を処方できるのは医師のみですが、処方前の最適な処方作成への支援や処方後のアドヒアランスを高めるための支援、また有害事象を最小限にとどめるための支援など、医師以外の医療従事者にもできる患者支援は少なくありません。われわれの考え方や経験を少しでも多くの方々に共有していただき、皆さんが関わる日々の抗凝固療法にこの本がお役に立てれば幸いです。
2019 年12 月
京都桂病院薬剤科/同 経営企画室
野﨑 歩
●Q&A形式、症例ベースで考え、最適な薬物療法や服薬指導を実践的に学べる!
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