2025.10.01

薬剤師・医療ニュース from じほう[2025年10月上旬]

次期改定の方針案、適正化は医薬品だけ――社保審・医療保険部会、委員が懸念

 厚生労働省は26日、社会保障審議会医療保険部会で、2026年度診療報酬改定に向けた基本方針のたたき台を示した。論点案では、医療機関の経営環境の変化や、地域包括ケアの推進といった幅広い課題に対応する方向性が事例として盛り込まれた一方で、効率化・適正化の事例には薬剤費を引き下げる項目だけが並んだ。このため委員からは「医薬品に限らず、医療提供体制全体の視点を示すべきだ」との指摘が相次いだ。
 厚労省は「骨太の方針2025」などを踏まえ、次期改定の基本方針を検討するための論点案を整理。このうち効率化・適正化の項目には、▽費用対効果評価制度の活用▽市場実勢価格を踏まえた適正な評価▽OTC類似薬等の薬剤給付の在り方の検討―といった例が挙げられた。
 しかし、これらがいずれも医薬品の適正化策だったため、横本美津子委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会長)は「効率的な医療提供体制の構築も重要な視点として盛り込むべきだ」と提案。藤井隆太委員(日本商工会議所社会保障専門委員会委員)も「医薬品以外の観点を取り入れてほしい」と求め、議論の幅を広げる必要性を訴えた。
 医療保険部会は今後も議論を重ね、12月までに基本方針をまとめる。その後、中医協で診療報酬改定の大詰めの議論に入る予定だ。

 

―高額薬剤も俎上に

 医療保険部会では、高額療養費制度の在り方についても意見を交わした。佐野雅宏委員(健康保険組合連合会長代理)は「10年前は人工心臓など循環器疾患が高額レセプトの中心だったが、今は高額薬剤が主流になっている」と指摘。その上で「薬剤の高額化が進む中、効果を検証し、そのデータを制度設計に活用すべき」と求めた。
 中村さやか委員(上智大経済学部教授)は「死亡の直前に高額薬剤が投与される例も少なくない」と指摘し、治癒の見込みが乏しいケースでの使用を抑制する仕組みづくりを提案した。
 これに対して城守国斗委員(日本医師会常任理事)は「治療効果に差がない時、そうした人に保険適用できないという制度を設計するのは、国民の理解を得にくい」と指摘。その上で「保険適用時に効果検証を徹底することが重要だ」と強調した。


|2025年9月26日・日刊薬業

マブキャンパスの公知申請認める――未承認薬検討会議

 厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」は29日、サノフィの抗がん剤「マブキャンパス点滴静注30mg」(一般名=アレムツズマブ〈遺伝子組換え〉)について、公知申請で「T細胞性前リンパ球性白血病(T-PLL)」の適応追加を目指すのが妥当と判断した。有効性は、海外の臨床試験や国内外の教科書、海外の診療ガイドラインなどから「期待できる」と整理。安全性についても「有害事象は本薬で既知の有害事象」などとし、T-PLLに対する同剤の臨床的有用性は、「医学薬学上公知」と判断された。

 

―ロス86品目中、7品目は対応済み

 検討会議ではドラッグ・ロス86品目について、最新の対応状況が示された。86品目のうち7品目は、ロスの対象外、または同会議で検討済みであるため、対応済みとした。
 最も開発優先度が高い「グループA」の14品目に振り分けられていたブレキサノロン(効能・効果=産後うつ病〈PPD〉)と、次に優先度の高い「グループB」41品目にあるベトリキサバン(静脈血栓塞栓症)は、いずれも米国での承認取り消しを報告。これにより「欧米既承認・日本未承認」という条件に該当しなくなり、ロスの対象外として処理された。
 「グループB」のうち、ナキシタマブ(神経芽細胞腫)は、ノーベルファーマに開発要請済み。アンジオテンシンII(敗血症患者への血管収縮剤)についても開発企業を募集中だ。いずれも既に同会議で、医療上の必要性の評価が済んでいることが確認された。
 また▽ニフルチモックス(シャーガス病)▽ベンズニダゾール(同)▽トリクラベンダゾール(肝蛭症)―の3剤については、日本国内に対象疾患の患者がおらず、治験の実施が難しいため、特定臨床研究や医師主導治験の体制を構築することを決めた。このため同会議では医療上の必要性の評価や、企業への開発要請などは行わない。

 

―ヒト合成セクレチン、開発企業「なし」に

 このほかに開発企業の募集を行った医薬品の最新リストを確認した。第3回要望募集分のヒト合成セクレチン(対象疾病=ガストリノーマ診断のためのガストリン分泌刺激、膵外分泌機能検査における膵液分泌刺激)は、これまで企業(企業名非公開)が開発の意思を示していたが、このほど申し出を取り下げたため、開発の申し出が「なし」の状況になった。

|2025年9月29日・日刊薬業

安定供給の「企業指標」踏まえ銘柄推奨――徳山薬剤師会の地域フォーミュラリ構想

 山口県周南市の徳山薬剤師会は地域フォーミュラリの作成に当たり、後発医薬品メーカーの安定供給などを評価する「企業指標」を踏まえ、推奨銘柄を選定する方針だ。3段階で最も高い「A区分」の品目を軸に選定していく予定。担当の瀬上直輝理事は「フォーミュラリを供給不安の予防策にしたい」と話している。
 安定供給の企業指標は、情報公開や予備対応力の確保など4つの視点で採点され、▽A区分(取り組み状況が一定水準超)▽B区分(一般的)▽C区分(水準を下回る)の3区分で評価される。A区分の品目の薬価は、他の区分の品目とは別に加重平均で算定されるため、高めになる見通し。現在は試行導入の段階で、2026年度の薬価改定以降、企業名が厚生労働省ホームページで公表される予定だ。
 瀬上氏はC区分の品目は今後、販売中止を含めて供給が不安定化すると推測。地域単位での安定供給を維持するには、主にA区分の品目でフォーミュラリを作成する必要があると判断した。推奨銘柄に選ばれた品目の流通量が拡大することも安定供給につながるとみる。

 

―対象は2次医療圏を想定

 フォーミュラリの対象地域は、周南市と近隣2市(光、下松両市)を含む2次医療圏を想定。まずは有効性・安全性、地域内での流通量なども参考に薬効群ごとに推奨する成分を選び、企業指標を踏まえた上で推奨銘柄を数品目に絞っていく予定だ。実際の活動は9月に徳山薬剤師会に発足させた「地域フォーミュラリ推進特別委員会」で推進していく。
 徳山薬剤師会だけでなく、地域内のほかの3薬剤師会とも連携して、2次医療圏単位での浸透を目指す。また、瀬上理事の職場の上司に当たるJCHO徳山中央病院の佐藤真也薬剤部長を通じて、他の拠点病院にも地域フォーミュラリの活用を呼びかけていく。

 

―フォーミュラリの目的、地域事情を勘案

 徳山中央病院では病院経営の観点から、既にいくつかの薬効群で院内フォーミュラリを作成。瀬上氏が主導する形で、経済性も視野に入れつつ採用薬を整理した。一方、地域フォーミュラリでは経済性とともに「安定供給を確保・維持できるか」という視点も重視する。瀬上氏は「供給不安が続く中、地域ニーズを踏まえたフォーミュラリをまとめていきたい」と話している。

|2025年9月29日・PHARMACY NEWSBREAK

ブラックコホシュ、ダイレクトOTCで審議――10月10日の厚労省部会で

 厚生労働省の薬事審議会要指導・一般用医薬品部会は10月10日、ハーブの一種「ブラックコホシュ」(製品名「メノフェミニン」)をダイレクトOTCとして要指導医薬品に指定するか審議する。効能・効果は、更年期におけるホットフラッシュや発汗、不眠など。
 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所のホームページの情報(2020年6月時点)によると、ブラックコホシュは体内で女性ホルモンに似た働きをし、更年期障害の症状を改善したとの報告がある一方、効果がなかったとの報告もある。月経前症候群に対する効果を示した研究はない。また、海外では肝機能障害を起こした事例があったという。

 

―エピナスチンの要指導薬指定も

 同日の会合では、エピナスチン塩酸塩(製品名「ロートアルガードエピナスチン点眼薬」)の要指導指定も審議する。効能・効果は、花粉やハウスダストなどによる目の充血や目のかゆみなどの緩和。医療用薬からのスイッチで、今年2月までに「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」がスイッチ化の課題と解決策をまとめていた。

|2025年9月29日・ PHARMACY NEWSBREAK

病院薬剤師の診療報酬、人件費賄えず――中医協分科会で眞野委員、改善を要望

 中医協の「入院・外来医療等の調査・評価分科会」は25日、2024年度診療報酬改定の付帯意見を踏まえたこれまでの検討結果の取りまとめを分科会長一任で了承した。眞野成康委員(東北大病院教授・薬剤部長)は病院薬剤師の不足に改めて言及し、現行の診療報酬では病薬の人件費を十分に確保できず、結果として病棟業務ができない「悪循環」に陥っていると強調。こうした状況の解消に向けた検討が必要だと訴えた。
 分科会では5月から13回にわたり議論。眞野氏は、現在の病棟薬剤業務実施加算の水準では150床程度の医療機関の算定で「ようやく薬剤師1人分の人件費」となると説明。小規模病院では同加算で薬剤師の人件費が確保できない状況にあると述べ、取りまとめにも委員意見として盛り込まれた。
 眞野氏は取りまとめへの反映に感謝した上で、病棟薬剤業務が入院料に包括されている地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟では、出来高算定が可能となるのはポリファーマシー対策の薬剤総合評価調整加算に限定されると指摘。「ポリファーマシー対策に一生懸命取り組んでも、人件費の確保には全く及ばない。結果的に薬剤師が確保できず、病棟での業務全般が展開できない悪循環に陥っている」と改善を求めた。

 

―院内処方の評価の引き上げにも言及

 取りまとめの病院薬剤師に関する項目では、医師の処方に基づく調剤業務について、院内処方と院外処方を比較すると評価に大きな差があるため、再度検討すべきだという意見も記載されている。眞野氏は対応策として、院内処方に対する評価を上げるほか、薬剤師の外来での薬学管理の評価を充実させていくことも考えられると述べた。

|2025年9月25日・ PHARMACY NEWSBREAK

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